「会社の顔」が個人事業主に タニタ改革の満足度タニタ流「働き方改革」(2)

西沢美幸さん(51) 開発部 首席研究員
世界初の体脂肪計開発にも携わったタニタ開発部の生き字引的存在で、この分野における日本有数の研究者。ワーキングマザーでもある。

――なぜ、独立して個人事業主となる道を選んだのですか。

「ちょうど制度導入の話を聞いた頃、従来の延長線上の発想で仕事を続けていいのか、迷いが生じていました。体脂肪計や体組成計に少し手を加えた商品を開発するだけではなく、新しいアイデアにチャレンジするような思い切りが必要なのではないか、と思っていたのです」

「そういうタイミングだったので、独立して『タニタ開発部』という枠組みからいったん外れてみれば、自分の世界が広がるのではないかと考えました」

――すぐに決断できましたか。

「やはり不安定になるのは怖かったですし、私は生来ズボラなので、確定申告などがきちんとできるのか不安もありました。でも会社から収入の見通しを具体的に示してもらい、確定申告についても税理士のサポートを受けられると聞き、決心しました」

仕事の範囲が広がった

――独立して変わったことは。

「やはり、仕事の範囲が広がりましたね。もともと私は、無味乾燥な数字を、一般の人がわかりやすい形に変換して提示するとか、グラフを面白く視覚化するといったことが好きでした。これまではそういうアイデアがあっても『それは開発部のやる仕事じゃない』と言われてしまうので、こっそり事業部の人に『何かの資料に使ってください』とお渡しすることしかできなかったのですが、いまは本当にそれが誰かに役に立つことであれば『仕事』として請けることが可能になりました」

「いま取り組んでいる、呼気ガスから消費脂肪量や脂肪燃焼量を計測・表示する商品の開発においても、社外の研究者や企業の方々と積極的に組むケースが増えました。開発部の一員として関わってきた時より気持ちの面でも自由度が高まりました。それと、最近は社外から講演やセミナーの依頼をたくさんいただくようになりました」

西沢美幸さん

――依頼が、西沢さん個人に対して来るのですね。

「はい。以前も年に数回は会社経由で依頼をいただいていましたが、『開発部の仕事ではない』という理由でほとんど断らざるを得ませんでした。でも独立してからは、個人的に指名を受けることが増えました。私の講演をどこかで聞いた大学関係者から『うちの大学でもやってくれませんか』と声がかかったり、女子校の先生から『リケジョの生き方・働き方』について話してほしいと言われたりすることもあります」

「本来は、データの解析をして計算式をつくるとか、プログラムをつくるとか、部屋にこもってやるタイプの仕事が多いのですが、個人事業主になってからは、人と接する機会が格段に増えました。それはとても楽しいですね」

――海外出張も増えたそうですね。

「海外で研究している先生から、データ解析についての相談を受けたりすることが増えています。海外の現地法人の方から言われたのですが、私が独立して個人事業主になってからは、声がかけやすくなったそうです。以前は、現地法人が私を呼ぼうとすると、まずは開発部に話を通さなくてはならなかったのですが、いまは私個人に相談すればいいので、プロセスも簡単になったと聞きました」

子どもに働く姿を知ってもらえる

――子どもとの生活に変化はありましたか。

「たまたま子どもの学校のPTAの役員になり、学校に行く用事が増えたのですが、個人事業主になったおかげで時間の融通が利きます。以前は子ども関係の用事のために時間をひねり出すのが大変でしたし、周囲にも気兼ねしていましたが、いまは成果を出しさえすれば必ずしも会社にいなくていいので、気持ちの面でも楽です」

――お子さんにも変化がありましたか。

「はい。子どもは以前、会社のクリスマスパーティーに来たときに、優しいお兄さんやお姉さんに囲まれ、おいしい食べ物もたくさん出してもらって『ママはあんな夢のようなところに毎日行っているなんてずるい。学校に行くより会社のほうがずっと楽じゃないか』と言っていました。どんなに私が『あれは特別な日で、普段はママもすごく頑張ってるのよ』と話しても全く信じてもらえなくて。それが最近は、私が懸命に働く様子を目の当たりにするので、『確かにママも大変そうだな』というのがわかってくれたようです」

「すごく難しい計算をしているときは、話しかけられないくらい怖い感じになっているかもしれませんが、それも含めて、子どもに働く姿を知ってもらえるのは、とてもいいことだと思います。これは日本活性化プロジェクトに参加したからこそ味わえた感覚です」

(ライター 石臥薫子)

<<(1)社員が個人事業主に タニタの改革が合理化でない理由
(3)私30代、独立で変わった タニタ働き方改革のリアル >>

「ニューススクール」記事一覧

タニタの働き方革命

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,650円 (税込み)

管理職・ミドル世代の転職なら――「エグゼクティブ転職」

5分でわかる「エグゼクティブ力」
いま、あなたの市場価値は?

>> 診断を受けてみる(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら