社員が個人事業主に タニタの改革が合理化でない理由タニタ流「働き方改革」(1)

「社員時代とほぼ同等の仕事をするのであれば、報酬がいきなり増えたり減ったりしないほうが、働く側からみても納得感は大きい」という。

「追加業務」は、違う部署から基本業務以外の仕事を請ける場合や、社外での講演活動などが当てはまる。社員であれば、そうしたプラスアルファの業務は「よろしく」と言われればやらざるを得ないし、残業を余儀なくされるケースもあるが個人事業主であれば「仕事」として請け負い、報酬も受け取れる。さらに、基本業務の範疇(はんちゅう)であっても、当初想定していた目標をはるかに超えて成果を出した場合はインセンティブとしての「成果報酬」を得られる。

タニタの谷田千里社長(右から2人目)と日本活性化プロジェクトメンバーら

「業務委託契約書の中身を詰めるプロセス自体にも意味があります。従来の『社員』という立場では曖昧になりがちだった仕事の範囲や評価基準、報酬との関係もしっかり定義し直すことができるからです」(山本さん)

手取り収入は平均28.6%アップ 社会保障は?

今回、タニタが新制度を作る上でこだわったのは、働く人の手取り収入の最大化と、社会保障などについての不安の解消だったという。そのため、基本報酬には、従来会社が負担していた社会保険料分も含めた。社会保障が手薄にならないようにするには、民間保険の活用が必要だが、その原資をキャッシュで渡すという発想だ。

「社会保険料の会社負担を減らすために、個人事業主化をすすめているのではないか」といった疑念を拭うためにも、そこにはこだわったという。

では手取り収入の最大化について、結果はどうだったのか。

18年3月に確定申告をした1期メンバーの場合、会社員時代に手にした残業代込みの給与・賞与額に比べて、手取り収入は平均で28.6%アップした。中には他社の仕事も請け負ったため最終的に手取りが7割近い増加となった人もいた。ほとんど業務内容が変わらなかった人もおしなべて手取りが増え、一番少ない人でも16%は増加した。一方、会社側の負担増加は1.4%にとどまった。「現時点では、想定以上に効果があった」というのが会社側の手応えだ。

課題は社会的信用・ローン問題

ただ、課題もある。日本社会は生活のあらゆる場面で「法人」やそこに勤める「正社員」が優遇され、個人事業主や非正規労働者は不利な扱いを受けることが多い。一般的に個人事業主は住宅ローンが組みにくいともいわれる。タニタでも活性化プロジェクトのメンバーが個人として業務用に車をリースしようとしたところ、かなりの悪条件を提示されたことがあったという。

そのため、タニタでは独立したメンバー全員が加入する「タニタ共栄会」という相互扶助の団体を設立。共栄会がリース契約の主体になって、会員にサブリースしたり、住宅ローンの保証をしたりできないかなど、さまざまな方法を模索中だ。

「まだ仕組みは完璧とは言えませんが、残業削減一辺倒ではない本当の意味での『働き方改革』を進めるために、まずは一歩を踏み出しました」(同)

(ライター 石臥薫子)

(2)「会社の顔」が個人事業主に タニタ改革の満足度 >>

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タニタの働き方革命

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,650円 (税込み)

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