「父親が育休取ると子の偏差値があがる」って本当?東京大学大学院 山口慎太郎准教授(上)

白河 フランスの場合、国家の強い主導で「男性を父親にする国家プロジェクト」として制度改革が進んだそうです。あと、先生の本の中で思わず注目してしまったのが、「父親が育休取得すると、子どもの偏差値が上がった」というデータ。これはどういう関係が?

男性育休は影響力のあるリーダーが率先することが大事だという

山口 先ほどのノルウェーの調査ですね。父親が育休取得した場合、育休取得しなかった場合と比べて、子どもが16歳になった時点の偏差値平均が1上がったそうです。研究チームは、「子育ての開始期間の父親の関わりが、その後の教育面での関わり方も積極的に変えたのでは」と考察しています。

白河 なるほど。子どもの発達にプラスの影響があり、そしてパパ自身のキャリア面でもデメリットがないとなれば、育休取得を選択する男性は自然と増えていきそうですね。私も政府に提言するときはフランスを習って「まず2週間から」と言っていましたが、まだ甘いですね。海外の成功事例を根拠に、「1カ月100%取得」くらい言わなければと思いました。

一方で女性のほうも、まだまだ「出産・育児はキャリアにマイナスになる」というイメージは根強い。それは女性側だけでなく、企業側の意識もそうで、ある日本企業での調査によると、育休取得の有無とキャリア展望の関係を見ると、育休取得経験のない女性のほうが管理職候補になりやすい。上司としては、積極的に候補から外しているというより、「よく分からないから保留にしておこう」という判断になってしまうようです。かなり明確な違いが出ていたので衝撃的でした。

山口 なるほど。「育休からの復帰スピードが早い女性ほど、その後に出世しやすい」という調査結果もあります。たとえ能力に差はなかったとしても、「私はこんなにやる気があるんです」というアピールになっている可能性がある。本人の意思であれば問題ありませんが、もし「早く復帰しなければ出世に響く」というプレッシャーになっていたとしたら、よくないことですね。

これに近い研究で、労働時間と昇進確率の関係を見た調査があるのですが、超長時間労働をすると急に昇進確率が上がるというパターンが見られるんです。「働く時間を蓄積するほど能力が上がって、結果として評価が上がる」というのは理解できることですが、「ものすごく残業をすれば出世しやすくなる」という図式があるとしたら、明らかにアピール効果ですね。

白河 つまり、能力ではなく「やる気」を労働時間をベースに見られている、と。まさに、男性の育休推進とは逆行する考え方。働き方改革以降は改善されると信じたいところですね。ここはぜひ、環境相に就任された小泉進次郎さんにも育休を取っていただいて、強い追い風を吹かせてほしいですね。

山口 影響力のあるリーダーが率先することが大事だと私も思います。

(次週公開の後編では保育園生活が母子にもたらす好影響、育休期間の長さはどれぐらいが適当か、女性がキャリアを継続することの意味などについてお伺いします。)

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(ライター 宮本恵理子)

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