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写真はイメージ=PIXTA

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社員がいきいきと働き、高いパフォーマンスを発揮する職場をつくるには何が必要か。産業医として多くの企業で社員の健康管理をアドバイスしてきた茗荷谷駅前医院院長で、みんなの健康管理室代表の植田尚樹医師に、具体的な事例に沿って「処方箋」を紹介してもらいます。

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プレゼンテーションや大事な商談で、緊張して汗をかいたり胸の鼓動が高まったりするのは当たり前のことです。しかし緊張のあまり顔が硬直してしまったり、電話に出られなかったり、日常生活に支障を生じるようなら、「社交不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)」の疑いがあります。

社交不安障害を患ったIT企業に勤める27歳男性の事例です。

初対面の人と接すると顔面が硬直してしまい、仕事中も常に切迫感や緊張感があるとのことでした。朝礼での1分間スピーチでは、緊張のあまり、頭が真っ白になって言葉につまってしまうばかりか、動悸(どうき)がして倒れてしまいそうになるというのです。

産業医との面談でも「こうした自分の姿を周りがどのように持っているのか、気になって仕方がない。不安と緊張に胸が裂けそうだ」と訴えていました。

専門医にかかることを指示、現在は治療を続けています。

多くの人の注目を集める場面では、誰もが多かれ少なかれ緊張するものですが、この事例にみられるように社交不安障害では、過度の不安感や緊張感から心身に不調や苦痛をきたしてしまいます。こうした症状は10歳代のころから出現することがあります。

具体的な症状としては、動悸、発汗、体の震え、息苦しさ、腹痛などがあります。基本的には、人からどのように思われているとか、恥ずかしいとか、そういった気持ちが症状を引き起こしてしまうのです。

なかには、緊張のあまり会社に行けなくなる人もいます。外食の際、吐き気を訴える例もあります。緊張感を取り除くために飲酒に頼り、アルコール依存症になってしまう人もいます。

さらに、こうしたことを家族や上司に話しても理解してもらえず、解決の糸口が見つからずに苦悩を抱え込む人も少なくありません。結果として、仕事もうまくいかず、自己評価が下がったり、上司から注意されたりして、二次的にうつ状態を来すことがあります。

海外の研究では、生涯のうちに社交不安障害にかかる人は男性では11%、女性では15%に上るといいます。決して特別な病気ではないのです。

社交不安障害に似た病気に「対人恐怖症」があります。異なるのは、対人恐怖症は「誰かが自分のことを悪く言っている」などの妄想を伴うもので、社交不安障害にそのような精神病との境界例は含まれてません。

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