退職金のもらい方 損得はどう判断?一時金と年金方式退職マネー学(上)

幸子 退職金を一時金でもらうと社会保険料はかからないわ。一方で年金で受け取ると会社を辞めて厚生年金などから脱退した後は国民健康保険や介護保険料の対象。この結果、退職金を年金で受け取る(2)の場合、給与や公的年金も合わせた社会保険料全体では、一時金で受け取る(1)より社会保険料は100万円程度も多くなるわ。

良男 税金や社会保険料が大きく増える結果、退職金を一時金でもらうほうが手取りが多くなるわけか。一時金と年金で半分ずつもらう(3)の場合は手取りは(1)と(2)の中間なんだな。

幸子 深田さんは「社会保険料は今後も上昇が見込まれるので、一時金方式が手取りで有利になりやすい傾向はさらに強まる」とみるわ。ただし富国生命保険の年金数理人の中林宏信さんは「給付利率がもっと高かったり、年金でもらえる期間が長かったりすれば、手取りでも年金が有利なこともある」と言ってるの。まずは自分の会社の条件をよく調べて、終身年金でもらえる仕組みがまだあるなら大事にしたいところね。

良男 ところで来年から公的年金等控除が変わるよね。

幸子 さっきの税金の試算は、公的年金等控除だけでなく基礎控除などの他の非課税枠も併せて計算しているの。確かに来年から公的年金等控除は10万円低くなるわ。だけど代わりに基礎控除が10万円増えるから、年金で受け取る場合の非課税枠の合計は原則的に同じよ。

 手取りで考える損得以外にも、受け取り方について考えるべきことはあるの?

幸子 一時金の比率を多くした場合、気を付けたいのが無駄遣いね。気分が大きくなって夫婦で世界を船旅したり、多額のお金でいきなり資産運用を始めてしまったりする例も多いの。旅行や運用は悪いことではないけれど、長い老後を考えてちゃんと資金を残せるように、計画的に使っていかないとね。

■イデコ、退職金と非課税枠共通
ファイナンシャルプランナー 深田晶恵さん
最近注目を浴びているのが個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)です。金融機関によっても異なりますが、イデコも原則的には退職金と同様に受給時に一時金か年金方式、あるいは併用を選べ、一時金なら加入年数に応じて退職所得控除、年金でもらうなら公的年金等控除が使えます。これらの非課税枠の仕組みはイデコ独自のものではなく、退職金や公的年金の非課税枠と原則的には共通です。
退職金やイデコ、公的年金を総合的に考え、非課税枠を有効に使うなどして税・社会保険料の総額抑制を心がけましょう。例えば、60歳でもらった退職金で退職所得控除の枠を使い切ってしまう場合、60歳代前半の公的年金等控除の枠が残っているなら、イデコはその枠内で年金方式でもらうことなども検討できます。
(聞き手は編集委員 田村正之)

[日本経済新聞夕刊2019年10月2日付]

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