企業価値高めるESG 長期投資の果実に(渋沢健)コモンズ投信会長

写真はイメージ=123RF
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8月14日付日本経済新聞によると東証1部企業の過半数に当たる1152銘柄が13日時点でPBR(株価純資産倍率)1倍を下回り、2019年で最多だったそうです。PBRは株価を1株当たり純資産で割って算出し、企業の価値に比べて株価が割高なのか、あるいは割安なのかを測る指標とされています。9月以降に日本株全体は回復したものの、半数弱の銘柄は依然として1倍を下回っているとみられます。割安な銘柄がなお多いとみることもできますが、筆者は資本市場が日本企業へ痛烈なメッセージを発していると考えています。

PBRはPrice Book-value Ratioの略で、株価が1株当たり純資産(資本金や利益剰余金などの合計)の何倍まで買われているかが分かります。例えばPBRが1倍というのは、企業の時価(株価)は1株当たりの資産価値と等しいと市場が評価していることを意味します。

ここで取り上げている資産価値とは、企業の財務諸表に記載された数字をもとに算出できる財務上の価値、いわば「見える価値」です。従ってPBRが1倍を超える企業には見える価値を上回る価値が存在すると資本市場が判断していることを示します。非財務的で、数値化が困難な「見えない価値」と考えていいでしょう。言い換えると、見えない価値が存在する企業には将来性、持続的な価値創造への期待というプレミアムを資本市場が上乗せしていることになります。

一方、PBRが1倍割れの企業は見えない価値がマイナスになっていると評価されたことを示します。大まかに言えば、そうした企業は株主にとって将来性がないどころか存在する意義がなく、解散して資産を売却して清算した方が多くの価値を理論上は得られるということです。企業の見えない価値の大きな源泉は人材なので、PBR1割れ企業の経営者や役員、管理職、社員はマイナスの価値しか生んでいないと資本市場が評価していることになります。

ESG、企業の将来性育む

PBRが1倍を下回っていても、自社の見えない価値の存在や健全性に確信を持つ企業は資本市場の評価に耳を傾け、目を開き、立ち向かう姿勢が求められているといえるでしょう。何が見えない価値なのかは企業によって様々ですが、例えばESG(環境・社会・企業統治)への取り組みを訴えることが選択肢になるのではないでしょうか。環境問題や社会問題などへの取り組みの成果は短期的な単年度で測定するのは困難であるため、見えない価値に相当します。

弊社コモンズ投信では、こうした見えない価値は長期投資の果実の源泉であると考えています。企業の財務諸表に数字で記載された見える価値は過去の取り組みが表面化した氷山の一角であり、企業の将来性を育んで持続的な価値を創造するのは海面下に潜む見えない価値にあるからです。

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