二番煎じは恥じゃない 僕の成功法則は「改良者」流カルビー元会長 松本晃氏

しかし、市場を広げるには、2つの大きな壁がありました。ユーザーである医師と厚生省(当時)です。まず、医師に使ってもらえるよう働きかけなければ始まりません。外科手術は、切るより縫うのが難しいんです。失敗すれば患者の命にもかかわります。自動縫合機を使えば簡単なのに、日本には「機械を使うのはけしからん」と言うえらい医師が大勢いました。「電卓を使うのはけしからん。そろばんでやれ」と言っているようなものです。考えを改めてもらうため、米国製品の好きなお医者さんにお願いして回ったり、米国から著名な医師を呼んで講演をしてもらったりと、地道にいろいろやりました。

飛躍のバネは「自分で売り込む」

2番目は厚生省で、これはお金の問題につながります。手で縫うときは絹糸を使いますが、これは非常に安いんです。それに比べ、自動縫合機の値段は明らかに高い。日本では、医療保険がきかない場合、高い機械はなかなか使ってもらえません。そこで自動縫合機を保険の対象にしてもらえるよう厚生省に足しげく通い始めました。

医師も厚生省も、説得するのはかなり大変でしたが、結果的にはうまくいきました。こうして僕のにらんだ通り、自動縫合機は主力商品として大きく育ったんです。

売り方も変えました。医療機器というのは、メーカーやセンチュリーメディカルのような輸入品を扱う会社が直接病院に売るのではなく、必ず卸問屋が間に入ります。僕がセンチュリーメディカルに入ったときは、営業の担当者が問屋に行って、「すみません、これを売ってきてください」と頭を下げてお願いしていました。

しかし、多種多様な商品を扱っている問屋が、センチュリーメディカルの商品にだけ力を入れてくれるはずがありません。たいして売れてもいない商品を売るよう頼まれ、「分かりました。おたくのために汗かきます」なんてね。口では言っても、実際にはやるわけがない。

だから、僕が入って間もなく、自分たちで直接売るように改めました。問屋も一応通しましたが、実際にお願いするのは、注文伝票を取りに行ってもらう、商品を運んでもらう、集金してもらう――だけです。売り込みは、自分たちでするようにしたんです。これも売り上げが伸びた要因です。

僕はカルビーの会長兼最高経営責任者(CEO)として、無駄な業務や事業を徹底的に省いて会社を成長させました。そのやり方は、センチュリーメディカルを立て直した成功体験に基づいているのだと思います。

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松本晃
1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事入社。93年にジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)日本法人に転じて社長などを歴任した。2009年にカルビーの会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。停滞感のあった同社を成長企業に変え、経営手腕が注目されるようになった。11年には東証1部上場を果たし、同社を名実ともに同族経営会社から脱皮させた。18年に新興企業のRIZAPグループに転じ、1年間構造改革を進めたのも話題に。

(ライター 猪瀬聖)

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