カラスやタコも 明らかになる動物の驚くべき「知力」

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

39歳のボノボ「カンジ」は、優れた言語能力を持つことで知られている。単語に対応する数百種類の記号を使って意思伝達も行える(PHOTOGRAPH BY VINCENT J. MUSI, NAT GEO IMGE COLLECTION)

ワタリガラスは未来の計画を立てられる。タコはココナツの殻からよろいを作る。そして、オランウータンは過去について「話す」ことができる――人間だけではない不思議な、動物の知力を紹介しよう。

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科学的な調査によって、動物の新たな認知能力が次々に明らかになっている。しかし、知力を測るというのは一筋縄ではいかない。動物の知力はあまりにも複雑で、さまざまな適応能力が関係してくるからだ。

「私たちには、他の動物がどのように情報を処理しているのかはわかりません。その点が特に大きな障害の一つです」と、家畜の認知能力について研究する米カリフォルニア大学デービス校動物科学部助教授、クリスティナ・ホーバック氏は述べる。

動物の中には、人間が知覚できない感覚を持つものもいる。たとえば、サメは電流を正確に感じることができ、昆虫の中には紫外線を見られるものもいる。

動物の知力を把握する方法は、人間の感覚によってゆがめられてしまう。「ミラーテスト」は、動物が鏡に映った自分を認識する能力を試す実験で、自己認識力を評価するためによく使われている。ハンドウイルカ、カササギ、オニイトマキエイなどは、このテストをパスできる数少ない種の例だ。

人間は視覚を非常に重視する。そのため、視覚による自己認識が標準になっているとホーバック氏は言う。「しかし、ブタのように、においで個々を識別している種はどうでしょう。こういった動物には、視覚情報は重要ではありません」。ミラーテストは嗅覚よりも視覚を多用する種に有利であり、自己認識力を客観的に測る方法とは言えない。

キバタンというオウムは音楽のリズムに合わせて踊ることができる。これは、2009年のある研究で明らかになった(PHOTOGRAPH BY VINCENT J. MUSI, NAT GEO IMGE COLLECTION, PHOTOGRAPHED AT BIRD LOVERS ONLY, DUNCAN, SOUTH CAROLINA)

そもそも、動物の異なる種の知力を意味があるように比較することは不可能だ。ある領域で勝っている動物が別の領域では劣っていることがあり、逆もまたしかりである。認知テストに合格できるかどうかは、動物の感覚能力によるところが非常に大きい。人間の能力をものさしにして動物の種の知力を測れば、そこに欠陥があることは明らかだ。