ダンディズム おくのほそ道

アラン・ドロン 濃紺スーツに秘めた惑わない心 服飾評論家 出石尚三

2019/10/7

2002年、フランスのモデルであるレティシア・カスタ(右)と。シックなスーツを洒脱(しゃだつ)に着こなしている=AP
19世紀の英国からフランスへと広がったダンディズムとは、表面的なおしゃれとは異なる、洗練された身だしなみや教養、生活様式へのこだわりを表します。服飾評論家、出石尚三氏が、著名人の奥深いダンディズムについて考察します。



1960~70年代の日本でアイドル的な人気を集めた二枚目映画スターといえば、フランスのアラン・ドロンです。それまで「その他大勢の俳優」の一人でしかなかった彼は60年に映画「太陽がいっぱい」に主演し、世界で拍手喝采を浴びました。この作品は映画音楽も流行し、公開当時は街を歩けばどこかから、あの気だるい、退廃を感じさせるメロディーが流れてきたものです。

■映画で強烈な印象を残したファッションとは対照的

アラン・ドロンは主演した作品ごとに、そのファッションでも強烈な印象を残しました。「太陽がいっぱい」では素肌に金のペンダントがまぶしかった。「地下室のメロディー」では革ジャンパーを羽織った姿が印象的で、「サムライ」ではトレンチコートと、さまざまな衣装を着こなしました。

多くのファンがいた日本では、70年代にたびたびダーバンのコマーシャルに登場しました。スーツやトレンチコートを粋に着こなし、フランス語をつぶやくシリーズが大ヒット。ダンディーなスタイルが板につく外国の俳優として人々の記憶に刻まれました。

第42回カンヌ国際映画祭でジャンヌ・モロー(左)、ソフィア・ローレン(右)と。2019年、同映画祭はアラン・ドロンの映画への長年の貢献をたたえて名誉パルムドールを贈った=AP

そんなアラン・ドロンが普段、人前に登場するときの服装はというと、いつもスーツでありました。それもほとんど黒に近い濃紺のクラシックなスーツです。たいがい素材は上質なモヘア地。奥深い、上品な光沢があるのが特徴です。その上品さが、アラン・ドロンの「陰り」をうまく包み込んでくれたように思えます。

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