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磯村勇斗 何番手か気にしない、変幻自在に立ち向かう

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NIKKEI STYLE

2017年にNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)『ひよっこ』に出演。ヒロインのみね子(有村架純)と結婚する見習いコックのヒデを好演し、多くの人に知られる存在となったのが磯村勇斗だ。

『ひよっこ』放送後に作品数が増え、18年は『ういらぶ。』や『春待つ僕ら』などの青春映画のほか、『SUITS/スーツ』『今日から俺は!!』など3本の連ドラに起用。今年に入ってからも、小悪魔的な魅力で恋人を翻弄するキャラクターにふんした『きのう何食べた?』や、物語終盤のキーパーソンとして登場した『インハンド』など連ドラ出演が続き、勢いに乗っている。

「今振り返っても、『ひよっこ』の存在は大きかったですね。業界の方も含め、いろいろな方に知っていただけました。朝ドラのオーディションを受けたのは2回目だったんです。紙1枚で台本をいただくんですけど、最後の掛け合いのところに『アドリブ』って書いてあって。そういうのは初めてだったから、すごく印象に残っています。緊張するよりは、『僕を見てください』という気持ちでいたほうがいいと思ったので、楽しみながらやりました。何を言おうかって考えるより、相手がどう返してくるかなとか、生のやりとりで反応することを大切にしながら。

実際の現場もとても勉強になりましたね。ヒデは誠実で真面目な努力家なので、そこはブレずに、真っすぐに演じようと取り組みました。演出の黒崎博さんはお芝居の奥深くを見る方。いかに僕本人が感じて、セリフに気持ちを乗せられるかを見ているので、嘘がつけないというか。何度もやり直したり、『それ、本気で思ってないよね』みたいなダメ出しもたくさんいただきました」

話を聞いていると、演じることに真摯に向き合う姿勢が伝わってくる。子どもの頃から目立ちたがり屋で、次第に俳優業に興味を持った。高校生の頃は地元の劇団に入り、18歳で上京してからは小劇場で活動した。現在の事務所に入ったのは21歳のとき。同世代の俳優と比べると遅咲きとも言える。

「小劇場の舞台で主演をしたときに、今の事務所の方に声をかけていただいて、映像作品にも出演するようになりました。最初の大きな作品は、2度目の挑戦で合格した『仮面ライダーゴースト』(15年)です。1年半くらい携わりましたが、駆け出しの大事な時期にいろいろなことを教わりました。アクション、芝居、アフレコ、イベントと、俳優にとって必要な要素を一気に経験できたのは貴重でした」

新たな道が見えたヒール役

『仮面ライダー』に朝ドラと、新人の登竜門として定着している作品に恵まれた。そんな磯村のターニングポイントは、福田雄一が演出と脚本を手掛けたコメディ作品『今日から俺は!!』だという。

「福田さんがパワフルで、面白いことを追求するんだという強い思いが伝わってくる分、現場も盛り上がっていましたね。賀来賢人さんや伊藤健太郎さん、ほかにも同世代の俳優さんたちとお芝居でぶつかり合えたのは財産ですし、『今日俺』メンバーはみんな輝いてました。僕はライダー、朝ドラとやってきて、好青年や爽やかなイメージの役柄が多かったところ、この作品で卑劣で非道なヤンキーの相良役に出合えました。新たな道が見えたというか、相良役を自分に当ててくださった福田さんには、本当に感謝しています」

18年は9作品、今年もすでに6作品に出演。役柄の幅も広がっており、そこには磯村自身の考えも反映されている。

「主役とか脇役とかこだわりはなく、どのポジションでもしっかりその場に立ちたいと思っているんです。僕は演じることが好きなので、何番手だろうが気にしていなくて。面白い作品であればいくらでもやりたいです。マルチに動ける俳優でいたい。

最近は事務所サイドとディスカッションしながら、今の自分に合うものは何なのかと考えるようにもなりました。今年でもう27歳になったので、全部受け身ではなく、自分の道しるべは把握しなきゃいけないなと。変化できる役柄というのは意識しています。

4月期の『きのう何食べた?』は印象的でした。原作が大人気で、僕が演じたジルベールも人気のキャラクターだったので、プレッシャーはありましたが、たくさんの方に見ていただけてうれしかったです。男性同士のカップルというところで、どう表現しようかなとは考えましたが、結局は対象が誰であれ、人を好きになる気持ちに変わりはないので、山本耕史さんが演じる大ちゃんを好きという素直な感情で演じていました。

今後も俳優として、変幻自在に作品に立ち向かっていきたいですね。磯村勇斗と気付かれなくてもいいです。そのくらい、役で見てもらえる俳優になりたいです」

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2019年9月号の記事を再構成]

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