元気なうちは働く 「年金は75歳から」で増す選択肢経済コラムニスト 大江英樹

さらにもう一つのオプション試算では、長く働くことで年金保険料を払う期間を長くしたり、年金の受け取り開始時期について選択肢を広げたりするとどうなるかを検討しています。実はこちらの方が影響は大きいのです。国民年金の加入期間は現在原則として60歳まで、厚生年金は70歳までです。これをそれぞれ65歳までと75歳までにして保険料の納付期間を延ばすという案です。年金の受け取り開始時期については、現在は最大70歳まで遅らせることができる仕組みですが、もう少し後にして75歳からでも受け取りを開始できるようにしたらどうかという案が示されています。これは年金が75歳からしかもらえないというわけではありません。単に受給開始時期の選択肢が広がるだけなので、働き方に合わせてより自由度が増えるということです。

もし保険料納付期間の延長と受給開始時期の繰り下げなどの制度改正が実施され、75歳まで働いて受給を開始した場合に所得代替率はどれくらいになるかの試算が財政検証で示されています。試算はいくつかあり、最も標準的とされるケース3を例にとると、驚くべきことに所得代替率は111.9%になります。つまり、長く働くということは一人ひとりの年金受給額と年金財政に与える影響がそれほど大きいのです。

働き方と年金、広がる選択肢

これと似た試算は実は前回の検証でもあったのですが、この5年の間に議論は深まりませんでした。しかしながら「働き方と年金受給額」はこれからのシニアにとっては非常に関心の高いものになるはずです。言うまでもなく、日本は人口が減少していくと考えられますから働く人を増やすことはとても重要です。したがって今まで労働市場に参加してこなかった高齢者が働くようになることは、世の中の方向性として間違っていないように思います。

シニアにとっても年金の受け取り方の選択肢が広がるのは決して悪いことではないでしょう。もちろん一人ひとりの人生観や健康状態は異なりますから、自分が元気で働けるうちは働いて、それから年金を受け取り始める時期を決めればいいのではないでしょうか。

今回の財政検証は制度改革の議論のスタート地点であり、改革の方向性についての議論はこれから盛んになるとみられます。本コラムでは今後も注目していきたいと思います。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は10月17日付の予定です。
大江英樹
野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年3.0 50代から考えたい『その後の50年』のスマートな生き方・稼ぎ方」(日経BP)、「定年男子 定年女子 45歳から始める『金持ち老後』入門!」(同、共著)など。http://www.officelibertas.co.jp/
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