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定年楽園への扉

元気なうちは働く 「年金は75歳から」で増す選択肢 経済コラムニスト 大江英樹

2019/10/3

写真はイメージ=123RF

8月27日に公的年金の財政検証が厚生労働省から発表になりました。これは5年に一度実施され、公的年金の給付水準や財政状況が今後どうなりそうなのかを確認する、いわば「公的年金の健康診断」のようなものです。多くの人が誤解しているのですが、年金制度の将来を予測(Forecast)するものではなく、現状の姿を未来に投影(Projection)することで問題点や課題をみつけて議論していこうというものです。結論からいえば、今回の基本的な検証結果は前回(2014年)に比べて大きく変わるものではなく、若干改善した程度となりました。

■制度変更で所得代替率アップも

報道の中には、現役男性の手取り収入に対する年金額の割合である所得代替率が約30年後に現在の61.7%から50.8%に低下するというデータだけをとらえて、年金は将来2割減になるといった記事もありましたが、これは正しい理解ではありません。9月15日付の日本経済新聞朝刊記事「年金『大幅減』に潜む誤解 実質額、代替率ほど減らず」にもあるように下がるのはあくまでも所得代替率であって、年金の実額はほぼ変わらないか、ケースによってはむしろ増える場合もあります。したがって、年金制度の先行きを過度に悲観する必要はないのですが、近い将来に年金を受給する立場になるシニア層の人にとっては、今回の財政検証で注目しておくべきところがあります。それは基本的な試算に加えて実施した「オプション試算」です。

財政検証は公的年金制度を現状のまま変えない場合、経済成長や出生率などの変化によって制度の健全性がどのように変わるかを試算するのが基本です。これに対して制度を変えた場合にどうなるのかを示すのがオプション試算です。今回は2つのオプションが示されています。

ひとつ目のオプション試算は、厚生年金の加入対象者を増やすとどうなるかというものです。現在は勤め人でも企業規模や賃金、労働時間などによっては厚生年金に入っていない人たちもいます。ところが一定の給料、具体的に言えば月5万8千円以上の全ての人を対象にすると加入者は約24%、人数にすれば1050万人が増えます。これによって所得代替率は約5%アップと大きく改善します。

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