「自分常識」「自分ルール」を持ち込む

会社が変われば、「常識」も変わります。「これが常識」と思っていたことが、「非常識」と見なされてしまうこともあります。

例えば自分のデスクに趣味のおもちゃを飾る、デスクでおやつを食べる、仕事中に音楽を聴くなどは、職場ごとにルールが異なります。

また、上司との打ち合せや経営幹部へのインタビュー中、パソコンでメモを取ることを「当たり前」とする会社もあれば、「失礼」と見なす会社もあります。自身を「小職」と称したり、メールの署名に「拝」を入れたりなど、前の職場では「丁寧で良い」と教わったのに、新しい職場では「堅苦しい」と思われることもあります。

こうしたことは、自分の中では「常識」となっているのですが、周囲の人は違和感を抱いている可能性があります。新しい職場に入って間もないうちは、感度を高めて周囲を観察してください。

なお、文房具や紙袋といった、会社の備品類の使い方のほか、交通費の精算、仕事に使用する資料の購入などについても、会社によってルールが異なることを認識しておいてください。例えば、文具であれば会社が一括購入したものを使うのか、自身で購入して経費として精算するのか、タクシーの利用が認められるのはどんなケースか、仕事に使用するものの購入はどの程度まで経費で落とせるのか――などはケース・バイ・ケースです。前の会社と同じ感覚で行うと、後からとがめられることもあり得るので、細かなことでも確認を取るようにしましょう。

メールのルールも、会社によってまちまちです。特に、CCやBCCの使い方は会社によって慣習が異なります。例えば、「チームメンバー全員に必ずCCを入れる」「顧客に対する連絡は、上司にBCCを入れておく」といったような社内ルールを持つところは珍しくありません。その会社のルールや慣習を無視して、前の職場の感覚のままでいると、混乱を招くこともあるので、注意が必要です。

このような例は他にもいろいろあるはず。うっかり前の会社での習慣を引きずらないよう、周囲を見回して、事情を察するなり、「これはOKか」を確認するなりしてください。

社内になじまない言葉を使う

国や地域ごとに言語が異なるように、会社によっても言語が異なります。その言語習慣に早くなじむことも大切です。

無意識に人をイラっとさせるおそれがあるのが、「カタカナビジネス語」。例えば「アジェンダ」「アサイン」「イシュー」「エビデンス」「バジェット」といったものです。会議やプロジェクトに「ジョインして」という言葉なども、ある会社では日常的に使われていても、風土が異なる会社に行けば、「何をかっこつけて言ってんの?」と異質に感じられてしまうようです。

こうしたカタカナビジネス用語は、どれを使いどれを使わないのか、会社によって習慣が異なります。「違う言語を話す人が入ってきた」と思われると、既存社員に警戒心を抱かせてしまうかもしれません。最初は皆が話す言葉を観察しつつ、発する言葉を選ぶことをお勧めします。

なお、職種の位置づけや役割が大きく異なることもあります。例えば「マーケティング」という職種には、「リサーチ」「広報・宣伝」「販促企画」「営業企画」などの要素が含まれますが、その会社のマーケティング担当者がどこまでを担っているかは会社ごとに異なります。これは多くの職種に言えることです。

また、同じ役職名でも、その責任の範囲や社内での影響力に違いのあるケースもあります。「マネジャー」や「リーダー」という役職名を持つ人が、どの程度の範囲を掌握し、裁量権を持っているかも、会社によって異なります。

職種名・役職名を聞いただけで、これまでいた会社のものさしで「こういう役割の人なんだろうな」と勝手に判断しないようにしましょう。一般的な共通言語に見えるものでも、その会社では何を指すのかを意識し、正しく理解するようにしてください。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

森本千賀子
morich代表取締役兼All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊『マンガでわかる 成功する転職』(池田書店)、『トップコンサルタントが教える 無敵の転職』(新星出版社)ほか、著書多数。

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