八方尾根や富士の自然… グランピングで丸ごと満喫
充実した施設で豪華なキャンプを楽しむ「グランピング」が一段の進化を見せている。アウトドアブランドやホテルが開発した本格施設が出始め、記念日などに大切な人とゆっくりと滞在し、自然の中で満足のいくコース料理を楽しむこともできる。キャンプ初心者でも自然を余すところなく楽しめるアクティビティーをそろえた施設もある。
創作料理や駅から送迎も
グランピングとは「グラマラス」と「キャンピング」を合わせた造語だ。欧米の富裕層が料理人を連れて旅に出て、テントを張って優雅に過ごしたのがはじまりとされる。
美しい山々を見渡しながら、コース料理が楽しめたら――。アウトドア用品メーカーのスノーピークは、高級グランピング施設として「スノーピークフィールドスイート 白馬・北尾根高原」を7月に開業し、八方尾根開発(長野県白馬村)と組んで常設の宿泊施設をオープンした。景観と地元食材を生かした食事、スタッフによる手厚いサービスが自慢だ。
同施設の山口聡一郎支配人は「標高3000メートル級の北アルプスの山々を見渡せる」とアピールする。敷地面積は約2800平方メートルで、夕食には長野県産食材を生かした創作料理を味わえる。高原の朝日を眺める早朝ツアーもある。
運営の八方尾根開発によると、利用者の過半は初めてキャンプを体験する人たち。宿泊料は1人7万~11万円と高めだが、JR長野駅到着から送迎がつく至れり尽くせりの同施設は人気を呼び、開業以来盛況という。
社員研修の形で同僚らと宿泊したという仙台市内のIT関連企業勤務の竹中貴行さんは「トレッキングで自然に親しんだ。テントなど設備がそろっているのも魅力的」と感想を述べる。社員の女性(35)も「ホテルのような設備が整っていながら、テントで過ごすと雨音や山の天気を感じられる。露天風呂もあって快適だった」とくつろいだ表情。
テントはスノーピークが特別に開発した約50平方メートルの広々としたつくり。ベッドやコーヒーセットなども完備され、テントの側面全体を開放すれば、景観をより身近に感じることができる。
二人連れのほか、女性同士の利用や母娘の親子旅行も目立ち、全体では女性客の方が男性を上回る。「結婚記念日や誕生日会など、特別な日に合わせて滞在する人も多い」(山口支配人)
星空・たき火・寒いからこそ
7月にはアウトドア用品のモンベル(大阪市)も、高知県本山町に「モンベル アウトドアヴィレッジ本山」を開設した。吉野川にのぞむ敷地にコテージやレストラン、団体宿泊施設や温浴施設などがある。
同施設は「嶺北(れいほく)地域」と呼ばれる四国の中心部に位置し、ラフティングやカヤックなどの水上アクティビティーのほか、沢登りや山を歩くトレッキング、サイクリングも体験できる。特に水辺のアクティビティーは子供連れの家族や若い層に人気だ。
これから始まる秋冬シーズンに本領を発揮する施設もある。星野リゾートが手掛ける「星のや富士」(山梨県富士河口湖町)は15年に開業。河口湖を眼下にのぞむキャビンに滞在することができる。
星のや富士が過去2回利用者に聞いたグランピングに関する満足度調査によると、「満足」との回答が最も多かったシーズンは冬だった。キャンプには夏のイメージがあるが、同施設には、こたつでホットカクテル片手にボードゲームを楽しめる屋外ラウンジや、森の中で星空を観察することができる空中テントなど、空気が澄む冬の夜を満喫できるしかけが用意されている。
「ラウンジのホットカクテルやボードゲームで冬の夜を楽しめた」「寒い冬だからこそキャビンのこたつやクラウドテラスのたき火を満喫できた」との声が寄せられた。
一般社団法人日本オートキャンプ協会(東京・新宿)によると、2018年のオートキャンプ参加人口は850万人だった。前年を1.2%上回り、6年連続で増えている。
テント設営から料理まで自分でする本格的なキャンプはちょっとハードルが高いと感じるあなたも、奮発して大自然のリゾートを味わってみてはいかがだろうか。
(友部温)
[日本経済新聞夕刊2019年9月28日付]
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