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ハーバードが学ぶ日本企業

日本企業のイノベーションのカギは ハーバード大教授 ハーバードビジネススクール教授 ゲイリー・ピサノ氏(下)

2019/10/4

■製造業は高い技術を持った人を育てる

今のアメリカが製造業を重視すべきなのは、「単純労働者をたくさん雇うから」ではなく、「高い技術力を持った人を育てるから」です。製造業は、高度な技術・知識の源泉だからこそ重要なのです。ハイテク製品の工場を建設し、運営していけば、そこに国力を上げるために役に立つテクノロジーと知識が蓄積し、アメリカ経済の成長に波及的な効果をもたらします。

佐藤 ピサノ教授はなぜこれほどアメリカの製造業の未来に危機感を抱いているのですか。高度や技術や知識は、アメリカ政府やアメリカ企業がしっかり握っているのではないですか。

ピサノ 「ローテク製品の生産は中国、ハイテク製品の生産はアメリカ」ときっちりすみ分けができていて、重要な技術は国外に出していないから大丈夫だ、という意見もありますが、これは間違った見方だと思います。

多くのグローバル企業がコスト削減のために生産拠点を国外に移してしまったがために、重要な周辺技術も流出しています。環境技術、エネルギー、バイオテック、航空宇宙、医療機器などの分野において、かつての優位性が脅かされつつあるのです。こうした中、何を国外に移し、何を国内に残すのか、を見極めることが重要なのですが、その対策が十分ではないと感じています。

佐藤 新刊「創造的な構築:持続的なイノベーションのDNA(Creative Construction: The DNA of Sustained Innovation)」(未邦訳)は、大企業がイノベーションを起こしつづけるためのロードマップを示した本です。この本を執筆した動機は何ですか。

Creative Construction: The DNA of Sustained Innovation(2019, Public Affairs)

ピサノ 現在、日本だけではなく、世界中の大企業が「我々はかつてのようなイノベーション力を失っているのではないか」と危機感を抱いています。こうした中、大企業もベンチャー企業と同じようにイノベーションを起こせることを伝えたいと思いました。

今や「大企業になればなるほど、保守的になり、コアビジネスとその周辺ビジネスばかりに注力してしまうため、ベンチャー企業のようなイノベーションは起こしにくくなる」というのが定説になりつつあります。私もこれまで多くの経営者から「大企業から革新的な製品を生み出すのはとてもむずかしい」「イノベーションを起こすには会社が大きすぎる」といった悩みを聞いてきました。しかし私の独自の研究や経験から、それが誤った思い込みであることがわかっています。

■大企業でも組織能力再編は可能

イノベーションをテーマとした本に書いてあるのは、たいていベンチャー企業の成功事例です。ところがこれらの事例は大企業に直接役立つわけではありません。なぜなら大企業とベンチャー企業では組織体が違いすぎるからです。そこで、大企業のマネジメント層に示唆を与えられるような新しいイノベーション論を書きたいと思いました。

大企業であっても、組織能力を再構築し、イノベーションを起こす方法はあります。本書では大企業のリーダーが実践しやすいように、そのロードマップを詳しく示しています。ホンダジェットの事例も書いていますし、日本の読者の方々にぜひ読んでいただきたいです。

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