佐藤 自動車と航空機では、同じものづくりでも必要とされる技術や知識は全く違うとおっしゃいました。そうはいうものの、ホンダジェットの事例を研究されて「これは自動車メーカーならではの発想だな」と思われた点はありませんか。

ピサノ ホンダジェットには自動車事業から得た理念を航空機事業に応用している点がいくつかあることに気づきました。

まず、ホンダジェットの座席は人間工学に基づいてデザインされていますし、コックピットの操縦かんやモニター画面などもとても美しく配置されています。またホンダジェットの内観、外観を彩る塗料にもお金をかけています。これらはまさに自動車メーカーならではのこだわりであり、従来の航空機メーカーがつくる製品には見られないものです。

納車式に似たセレモニー

販売・マーケティングにおいても自動車の販売代理店制度から得た知識を生かしていると思います。ショールームもその1つです。ノースカロライナ州のホンダエアクラフトカンパニーには、美しいショールームがあり、実際にホンダジェットを見ることができます。

さらにホンダジェットを購入すると、鍵を引き渡すセレモニーが行われます。これも新車を購入した顧客向けに行う「納車式」にヒントを得たのではないかと思います。飛行機が中央でゆっくり回っていて、華やかな照明があてられる中、藤野社長から鍵を渡され、握手する。航空機を購入するという体験を特別なものにしているのです。プライベートジェットを購入するような富裕層はお金で何でも買えますから、こういう特別なセレモニーは魅力的でしょう。

私も実際ショールームを見学させてもらいましたが、本当にすてきな空間でした。ホンダジェットの写真をたくさん撮影しましたよ。「これが自分の飛行機だったらいいのにな」と願いながら(笑)。

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ゲイリー・ピサノ Gary P. Pisano
ハーバードビジネススクール教授。専門は経営管理。主にテクノロジー戦略、オペレーション戦略、イノベーション・マネジメント、競争戦略を専門に研究。同校のMBAプログラムにて「成長企業のマネジメント」、エグゼクティブプログラムにて「収益性の高い成長の推進」を教えている。2009年にハーバード・ビジネス・レビュー誌に発表した論文「競争力の処方箋」は、マッキンゼー賞を受賞した。近著に「Creative Construction: The DNA of Sustained Innovation」(2019, Public Affairs)。

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