化粧品から思い出の品まで 上手な捨てどき教えます
「まだ使えるかも」「高かったから」……。さまざまな思いが絡み合い、処分をためらっているモノが自宅にあふれていない? 「捨てられない人」から「捨て上手」に生まれ変わるコツと、捨てどきの見極め方を学びましょう。
「寿命」を意識すれば捨てるのがラクに
「モノにも生き物同様、寿命があるんです」と整理収納アドバイザーの中山真由美さん。「寿命=モノの捨てどき。それを理解していない人が、際限なくモノをため込んでいます」。
吸水性が落ちたタオルなど「本来の機能を果たさないもの」も、流行遅れの服など「再登板の機会がないもの」も"寿命"。そう考えれば、捨てることへの後ろめたさが和らぐ。「モノ1つ1つと向き合い、要・不要を判断し、捨てる経験を重ねるうちに、手放し上手な"捨て体質"になれます」。
まずは寿命が明確な、使用期限があるものから捨てていこう。「捨てられたという成功体験によって、"捨てモード"のギアが上がる。すると、モノを買うときにしっかり吟味し、最後まで使い切るという姿勢も養われていきます」。
捨て体質に変わるための捨て方のコツ
捨て下手な人は、捨てる「心理的難易度の低い」ものから徐々にトライするのが成功の秘訣。「無理をしない"捨てる経験"を重ねれば、自然に"捨て体質"に!」。
慣れないうちに、いきなり大きなスペースに取りかかろうとすると、挫折しがち。気軽に取り組め、短時間で達成感を味わえる、小さなスペースから着手しよう。
面積の大きいところはアイテム別に取り組む
クローゼットなど大きな収納箇所は、「今日はシャツだけ」など、アイテム別に取り組む。「一歩一歩でも確実にモノが減っていっている実感を得るのが大事」。
まずは、短時間で負担なく行える捨て作業を繰り返し、捨てることを生活習慣にしていく。捨て習慣が身に付くにつれ、捨てるか否かの判断力も磨かれ、迷わず楽に捨てられるようになる。
捨てる・捨てないの判断にいちいち迷っていると、一向に進まずイライラ…。「賞味期限や使用期限のような、客観的な判断基準があるものから手をつけると、悩まず、捨てる勢いがつきやすい」。
まずは"捨てやすいモノ"から徐々に手放そう
モノには「心理的に捨てやすいもの・捨てにくいもの」がある。難易度の低いものから順番に捨てていくといい。
【化粧品】古いものを肌にのせ続けていない?
購入時期などから、客観的に判断しやすいジャンル。不要なモノの一掃で、メイク時間も短縮。
ファンデーションは酸化・変質の前に半年サイクルで買い替えを
油分が多く酸化しやすいリキッドタイプも、スポンジを通して雑菌が付きやすいパウダータイプも、開封後半年が目安。「春夏、秋冬と、半年ごとの買い替えがベター」。
化粧水・乳液・クリームは開封して半年が処分の目安
使用期限が書かれていないものは、未開封の場合で3年、開封後は半年が捨てどきの目安。「古いものは効能や使い心地が落ちたり、雑菌が混入したりする恐れも」。
マスカラはブラシがパサつくとメイクの腕も落ちる
液が乾燥してくるとまつげにきれいにのらなくなる。その上、「まつげの汚れがブラシに付き、雑菌も繁殖しやすいため、開封後3カ月を使用期限と考えて」。
アイシャドーは「古い顔」をつくる原因にも
チップを通じて雑菌が繁殖している恐れもあるため、開封後1年を目安に処分を。「トレンドカラーもあるので、古いものを使うと流行遅れの顔になるリスクも」。
スポンジ・チップは週1サイクルで洗うか使い捨てタイプを交換
皮脂汚れが付きやすいスポンジやチップは雑菌の温床。「週1度は中性洗剤で洗うか、100均などで買えるものを1週間で使い捨てて、常に清潔なものを使用しましょう」。
口紅・グロスは半年以内に使い切るのがベター
直接、唇に塗ると、雑菌が付いて変質しやすい。清潔なリップブラシを使い、半年以内に使い切ろう。「色がくすんだ口紅、容器内で油分が分離したグロスは即刻処分」。
【季節の商品】翌シーズンに持ち越さない
「処分の目安」さえ分かれば、思い入れがない分、捨てやすい。1シーズンで使い切るのが基本。
日焼け止めクリームはシーズン中に使い切り毎年最新アイテムを
未開封で3年、開封後は半年以内が目安。「日焼け止めクリームの使用感や効果は年々向上しているので、最新のモノに買い替えていくのがおすすめです」。
液体(スプレー)蚊取りはシーズンが終了したら処分を検討して
未開封で5年、開封後は3年が使用期限だが、「保存状態により成分が変質する可能性も。翌年には持ち越さないほうが、毎シーズン本来の効果を発揮してくれるはず」。
使い捨てカイロは有効期限を過ぎると機能が落ちることも
有効期限が明記されており、2~3年程度。期限を過ぎても安全上の問題はないが、「十分に温まらないとか、温かさが続かないなどのケースもあり、捨てるのが妥当」。
蚊取り線香は「火がつきにくい」「途中で消える」は寿命
蚊取り線香に明確な使用期限はなく、開封後も3年は使えるとされるが、「湿気を含むと火がつきにくくなる上、途中で消えてしまうことも。その場合は、買い替えを」。
"捨て体質"になれば、ハードルの高いモノもちゃんと手放せるように
"捨て方の基本"が身に付いたら、ワンランク上の"捨てにくいもの"も、どんどん手放していこう!
【紙製品・書類】気が付けば膨大な量に
自宅に日々、流入してくるため、たまるとかさばる紙類。ため込む前に、要・不要の判断を!
取扱説明書・保証書はウェブで読める 残すのは頻繁に読むものだけ
家電などの取扱説明書はメーカーのウェブサイトでも読めるため、頻繁に読むもの以外処分。ただ保証書が一体になったものは保証期間中、レシートとともに保管を。
本・雑誌は読み返したいものと旬な情報だけ残す
「再度読み返したい本と辞書以外は、すべて処分の対象。特に情報系の本は数年前の内容は通用しないことも」。雑誌は必要箇所のみスキャンし、デジタル化する手も。
レシート・領収書は家計簿に転記後、即廃棄心配なら1年間保管
確定申告を行う人は、申告後5年間の保管が義務づけられている。「単に出費を確認するだけなら家計簿に転記後、廃棄。心配なら1年間だけ保管し、その後は処分して」。
名刺は1年以内に会った人のみ名刺管理ソフトで整理
年1回、取捨選択を。「1年会わなかった人の名刺は、今後会う可能性も低いため処分。残りの名刺は名刺管理ソフトで管理するのがラク。名刺はシュレッダーで処分を」。
お札・お守りは1年たったら役目は終了 寺社でおたき上げを
効力は1年とされる。それ以上たったものは寺社に返せば、別の寺社のものでもまとめておたき上げしてくれる。「清めの塩と一緒に、封筒に入れて持っていきましょう」。
古い通帳は新しい通帳に切り替え後は手放してOK
記帳欄がいっぱいになった通帳は「新しい通帳に更新した時点で、シュレッダーで処分を。記録として、見返すことがあるなら、2年程度保管しても」。
【自然とたまりやすいもの】「これだけで十分」な量を把握する
無料配布のサンプルやかわいい空き缶、etc.。適正量を把握し、持ちすぎ体質から卒業しよう。
ウエス(雑巾代わりの布)は「大掃除用に」と多めに持つのはNG
「古着を裁断し、大掃除用にと年末まで取っておくのは時間と場所のムダ。雑巾を100均で買うほうが効率的」。ウエスを日常的に使うなら、小物かご1つに収まる量までに。
サンプルは半年以上前のものは成分変質の恐れも
化粧品のサンプルをもらうと、旅行用などにと取っておきがちだが、「そもそも長期保存は想定しておらず、もらって半年以内に使い切るのが鉄則。過ぎたら捨てる」。
レジ袋は15枚あれば十分あとは残らず手放す
1日に使う枚数×7日分+予備1枚あれば十分。「1日2回ゴミ捨てする人でも15枚。それ以上は捨てましょう。もし足りなくなったら買いましょう」。
かわいい瓶や缶は使い道が明確なものを厳選 それ以外はため込まない
かわいいからとついつい取っておきたくなるが、形がバラバラだと収納スペースも取りがち。現時点で用途が明確に決まらないものは、バッサリ手放そう。
保冷剤は必要なのは4つ程度 残りは店に返すか処分
「弁当の保冷や、発熱時に冷感ジェルシート代わりに使うにせよ、4つあれば十分でしょう」。残りは保冷剤をもらった店に返すか、古くなったものから捨てる。
紙袋は各サイズ3枚をファイルボックスに保管
大中小を各3枚程度残し、他は捨てる。「紙袋の中に紙袋を収納してしまうと、かさばって場所を取る。A4などのファイルボックスを使えばスリムに収まります」。
ポケットティッシュは古びた使いかけは床や窓拭き用に
家族の人数+予備1つで十分。「使いかけの古いポケットティッシュでテーブルなどを拭くのはあまり衛生的ではない。床や窓の汚れ拭きになら気兼ねなく使えます」。
【思い出の品】思い出は手放し、心に刻む
モノに寿命があるのは、思い出の品でも同じ。捨て体質に変わった今なら、上手に手放せる。
スマホ内の写真はクラウドを利用し、手元の写真は消去
撮影した写真をクラウド(GoogleフォトやiCloudなど)に自動保存する設定にすれば、基本的にスマホ自体に写真データを残す必要はない。定期的に消去する習慣を。
子供の成長記録は厳選したモノを思い出箱に保管
「思い出箱」(100均などで買える保管箱)を用意し、そこに収まる思い入れの強いモノだけに絞り込む意識を。卒業証書などは、写真に撮り、現物は処分するのも手。
昔の手帳・ノートは2年以上前のものは潔く処分しよう
「古い手帳を後で読み返すことは少ない。取っておくのは2年前までのものとし、それ以前のものは手放す」。捨てるのが心配なら、必要部分のみスキャンしておこう。
紙焼きの写真は台紙に貼った写真は台紙ごと周囲を切り抜く
アルバムから今後も見返したい写真を厳選。台紙に貼った写真は無理にはがさず、台紙ごと周囲を切り取り、箱に保存。スキャンしてPCに保存し、現物は処分しても。
年賀状・手紙は2年たったら捨てどき 顔写真付きは袋に入れて処分
「送り手が年賀状や手紙で知らせたいのは近況。2年たてば処分していい」。個人情報や顔写真が外から見えないよう紙袋に入れるか、シュレッダーにかけてから処分を。
ぬいぐるみ・人形は捨てる・残すの判断基準は「今、愛用しているか」
「今も愛用しているもの以外は処分。供養の気持ちを込め、塩ひとつまみとともに袋に入れて処分を」。人形供養を行う寺社に送り、おたき上げしてもらう方法もある。
引き出物・祝いの品は2年手元に置けば手放しても失礼ではない
自分は使わないものでも、自宅に招くこともある間柄なら、2年ほどは手元に置いておいたほうが安心。「後は売ったり人に譲ったりしても、失礼には当たりません」。
一新すれば使い心地アップ!捨てどきを逃しがちな要注意アイテム
「実は機能的にアウト」なものを無意識に使い続けていない!? 寿命を超えると生活の質を下げる2トップはこれ!
1.タオル
タオルは洗濯回数が30回ほどを超えるとパイルが傷んで吸水性が落ち、肌触りも悪くなるとされる。所有枚数や使用頻度でも異なるが、「1年使い続けたら処分すべき時期」。買い替えると使い心地の良さを実感するはず。
2.フッ素加工のフライパン
フッ素加工フライパンが調理しやすいのは、表面のフッ素が食材を滑らせるため。「1つでも傷ができると焦げつきやすくなる。傷やはがれが生じたら、買い替えるほうが効率的」。
この人に聞きました
整理収納アドバイザー。インブルーム取締役。整理サービス事業部責任者。心理カウンセラー。収納コンサルティングや講演、メディア出演など幅広く活躍。著書は『マンガでわかる 散らからない仕組み』(主婦の友社)ほか多数。
(取材・文 籏智優子 )
[日経ウーマン 2019年7月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
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