アップルのスマートスピーカー 驚く音質、接続も簡単
ようやく日本でも発売されたアップルのスマートスピーカー「HomePod」。記事「スマートスピーカー 海外で続々、サービスはまだまだ」など、世界のスマートスピーカーを見続けてきたオーディオライターの山本敦氏がHomePodを試用したところ、その高い音質や操作性に驚いたという。一方で注意が必要な部分もあると感じたようだ。
◇ ◇ ◇
アップルの「HomePod」は、2018年2月に米・英・豪で発売され、日本でも発売が待たれていたスマートスピーカーだ。アップルのAIアシスタント、Siri(シリ)を搭載したスマートスピーカーは、HomePodが現在のところ唯一のモデルである。
スマートスピーカーといえば、グーグルの「Google Home」シリーズや、アマゾンの「Echo」シリーズが日本でも2017年秋から順次発売されてきた。グーグルとアマゾンの純正モデルが1万円前後で買えるのに対して、アップルのHomePodは値段が3万2800円(税別)と高めに設定されている。
価格設定については様々な理由があると思うが、筆者はHomePodのサウンドを聴いて合点がいった。圧倒的に音が良いのである。
高さは172mm、幅142mm。重量約2.5kgの本体を手に持ってみると、しっかりとした重みが手応えとして感じられる。本体内部には上向きに低音を受け持つウーファーを搭載。音の指向性を自在にコントロールできる全7基の中高域用ビームフォーミングツイーターを周囲360度に向けて配置したことによって、力強さと広がりを併せ持った深みのあるサウンドを再生する。
グーグルとアマゾンのスマートスピーカーも十分に個性的な音で楽しませてくれるのだが、HomePodのサウンドは、ソニーやボーズなどオーディオメーカーが発売している3万円以上のスマートスピーカーと並べて比較すべき高いクオリティーに到達していると感じた。
音楽を聴くときはもちろん、YouTubeなどで動画を楽しむときも迫力あるサウンドを体感できるはずだ。
AirPodsのような簡単接続
もう一つ、HomePodの魅力は、本体設定が驚くほどに簡単なことだろう。アップルのワイヤレスイヤホン「AirPods」をiOSデバイスと初めてペアリングするときの設定方法によく似ている。
セットアップには家庭内Wi-Fiネットワークのほか、iOS 12.4以降を搭載するiOSデバイス(iPhone/iPad/iPod touch)を使う。iOSデバイスの電源とBluetooth設定をオンにしてHomePodに近づけると、HomePodが自動的に認識されて、iOSデバイスの画面に設定の手順を示すガイダンスのアニメーションが表示される。画面の設定に従うと数分でセットアップが完了する。
音声アシスタントのSiriは、HomePodの場合も、iPhoneでおなじみのウェイクワード「Hey Siri(ヘイ、シリ)」と呼びかければ起動する。音声操作に対する反応はiPhoneのSiriよりも少しおっとりとしているように感じるが、日本語の音声コマンドの認識精度は高いと感じた。合成音声による返答は少し日本語がたどたどしくも感じるが、このあたりは基幹ソフトのアップデートにより改善されていくはずだ。
スマートスピーカーといえば、IoT機器やインターネットにつながる家電を音声で操作するリモコンとしての用途も広がりつつある。HomePodは、アップル独自のスマートホームのネットワークである「HomeKit」をサポートしている機器の音声操作が可能だ。筆者宅にあるフィリップスのスマートLED照明「Hue(ヒュー)」もHomePodを通じて、ランプの点灯・消灯を切り替えたり、明るさの調整を行ったりすることができた。
対応音楽配信はApple Musicのみ
音質に優れたHomePodだけにその真価を発揮するのは音楽を再生したときだろう。アップルが提供する音楽配信サービス「Apple Music」を使えば、音声で聴きたい曲を楽しむことができる。
一方で注意しなくてはいけないのは、音声操作に対応する音楽配信サービスがApple Musicに限られている点だ。
「Spotify」や「Amazon Music」などアップル以外の音楽配信サービス、またはiTunesからiPhoneに取り込んだ音楽ファイルの再生は、音声をホームネットワーク経由で対応機器(この場合はHomePod)にワイヤレスで送り出す、アップル独自のAirPlay機能を使うことになる。そのため楽曲の選択や再生操作は、音声ではなく、iOSデバイスの画面をタッチして行う必要がある。この点はApple Music以外の音楽配信サービスを使っている人にとって問題になるだろう。
またHomePodはBluetooth接続によるオーディオ再生に対応していない。AndroidスマホやWindows PC、ポータブルオーディオプレーヤーとワイヤレスで接続して音楽を聴くことができない(MacについてはAirPlayが利用できるが、本体のセットアップには別途iOSデバイスが必要だ)。
音楽好きにとってHomePodはとても魅力的なスマートスピーカーだが、その機能を考えると、HomePodはiPhoneなどiOS端末を所有するユーザー向きのスマートスピーカーだということも間違いない。音楽配信サービスにApple Musicを利用しており、音楽を聴くときに「音質にはとことんこだわりを持ちたい」という人なら、HomePodの音質は一度確認する価値があるだろう。他の音楽配信サービスを利用している人も、一度HomePodで音楽を聴けば、他社のスマートスピーカーのように複数の音楽配信サービスをSiriの音声操作で対応できるようになってほしいと思うのではないか。
フリーランスライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経て独立。AI・IoTに関わるスマートオーディオ、4KにVODまで幅広いカテゴリーに精通する。堪能な英語と仏語を活かし、国内から海外のイベント取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。