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絶滅危機キリン、「楽園」の生息地求め危険な引っ越し

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ナショナルジオグラフィック日本版

アフリカ大陸にすむキリンは現在11万頭まで減り、地域によってはかなり厳しい頭数にまで追い込まれている。ナショナル ジオグラフィック2019年10月号では、野生のキリンが置かれた現状と、キリン保護のため、国を巻き込んで保護を進める人々をリポートしている。

◇  ◇  ◇

アフリカではこの30年間でキリンが4割近く減少し、現在の生息数は約11万頭だ。動物保護団体「キリン保全財団」(GCF)の共同代表を務めるジュリアン・フェネシーは、この状況を「静かなる絶滅」と呼ぶ。ゾウや大型類人猿が姿を消すことには注目が集まるが、野生のキリンが危機的状況にあることはほとんど知られていない。

実際、キリンがたくさんいる場所もある。南アフリカ共和国とナミビアでは、「狩猟動物ファーム」と呼ばれる民間養育施設が野生動物の個体数を押し上げている。この数十年でキリンの数がほぼ2倍に増え、合法的な狩猟も行われている。だが東アフリカでは、アミメキリンとマサイキリンが厳しい状況に直面している。またウガンダを中心に生息するヌビアキリンは、この30年で97%も減少し、大型哺乳動物のなかでも特に絶滅の危険性が高い。

「ケニア南部では、フェンスが原因でキリンが死んでいます。これは密猟以上に深刻な脅威です。キリンはフェンスを飛び越えられないため、生息範囲が分断されてしまうのです」。そう話すのは、GCFのコーディネーターで東アフリカを担当するアーサー・ムエンザだ。

ここでキリンの種について説明しておこう。2016年、ある研究チームがキリンに関する新しい学説を発表した。それまでキリンは1種(Giraffa camelopardalis)しか存在しないとされてきた。ところが遺伝子解析によると、キリンは4つの種に分類できるというのだ(まだ異論はある)。しかも、それぞれの種はヒグマとホッキョクグマの関係よりも遠縁であるという。

さらにこの4種の下に五つの亜種があり、これから紹介するナイジェリアキリン(Giraffa camelopardalis peralta)は、その一つだ。そして、三つの亜種が絶滅の危険性が高いとされている。

人口増加や家畜の過放牧、気候変動によって、牧畜民や農民は手つかずの原野も利用せざるを得なくなり、キリンの生息地を脅かしている。

ニジェールは特にキリンの数が少なく、1996年には49頭にまで落ち込んだが、その後20年余りで600頭にまで回復した。アフリカの野生動物保護では最大の成功例といえるが、これには訳がある。

2011年、ニジェール政府はキリンの保護を目的とした保護プログラムを策定した。アフリカ初の試みだった。密猟を徹底的に取り締まったおかげもあり、クレ地方のキリンは順調に数を増やしていく。しかし、年に11%以上ものペースで急増したせいで、農家や牧畜民との衝突が避けられなくなった。ナイジェリアキリンの数を健全に増やすためには、別の場所に新たな生息地をつくる必要があった。

ニジェールは、ナイジェリアキリンが安全に暮らせる第2の生息地を検討し、面積約1万平方キロのガダベジ生物圏保護区が最適だという結論を出した。ここは大型猛禽類やガゼルの貴重な生息地となっていて、50年前にはナイジェリアキリンが暮らしていたこともある。

生息地の移転には批判もある。「今の生息地で危機に直面していると言われるのに、実際には数が増えている。ふに落ちません」と話すのは、1990年代半ばにクレ地方で保護活動に参加した動物行動学者のイザベル・シオフォロだ。「どの生息環境が適切かについては、できる限りキリンの自然な行動に任せるべきです」

ニジェールのキリンは300キロ近く移動することもあると、シオフォロは指摘する。「今いる場所が危険になっても、彼らは自力で新しい生息地を見つけられるはずです」

ただし、移住させるためにはキリンに麻酔薬を投与しなくてはならない。これには大きなリスクが伴う。量が多すぎると呼吸が止まってしまうし、頭から倒れて頭骨にひびが入ったり、長い首や細い脚が折れたりする危険もある。逆流した胃の内容物が誤って肺に入れば、肺炎を引き起こしかねない。焼けつく砂の上に横たわると、体が熱くなりすぎる。2017年にウガンダで生息地の移転を行った際は、3頭が捕獲時のストレスで死亡し、移送中にも1頭が死んだ。

話をキリンの移住に戻そう。トレーラーは保護した4頭のキリンを乗せ、時速15キロで、約800キロ離れたニジェール中部のガダベジ生物圏保護区を目指す。途中で電線に引っかかるとキリンの首が切れてしまうから、先導車は欠かせない。

ところで、キリンの首が長い理由は、実はまだわかっていない。米ニューヨーク工科大学の進化生物学者ニコス・ソウロウニアスによると、キリンはインド亜大陸で進化し、およそ800万年前にアジアからアフリカに移ったという。現生する動物で最も近縁なのは、コンゴ民主共和国の熱帯雨林に生息するオカピだが、首は長くない。

ほかの動物が届かない、高い位置にある葉を食べるために、長い首と舌が進化したという説もある。一方で、首が伸びたのは性選択の結果だと考える研究者もいる。雄は雌をめぐって争う際、長い首を使って、丈夫な頭骨を備えた頭を振り回し、ぶつけ合う。首が長いほうが、戦いに有利だったのかもしれない。また、身を守る手段をもたないキリンが、いち早く敵を発見できるよう首が伸びたという説もある。

さて、トラックは47時間かけて、ようやくガダベジの保護区に到着した。途中休憩は1日2回、キリンにガオ(アカシアの仲間)の木立で食事をさせ、スタッフは3時間の仮眠をとっただけだった。真っ赤なローブとターバンを身に着けたトゥアレグ族のリーダーが、私たちを迎えてくれた。辺りは砂地で、草も低木もほとんど生えていない。子どもたちがうれしそうに両手を挙げ、跳びはねながら集まってきた。何カ月も前からキリンの到着を心待ちにしていたのだ。

「ここはキリンに最適な土地です」と、モーケルは笑顔になった。キリンたちがコンテナの上から周囲を眺めている。広々とした風景のなかに、アカシアの木が点在していた。なるほど、確かにぴったりのようだ。

(文 JOSHUA FOER、写真 BRENT STARTON、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[参考]要約して紹介した「キリンの引っ越し」は、絶滅の危機に瀕する動物たちの現在をリポートするナショナル ジオグラフィック日本版10月号「まるごと一冊『絶滅』」の特集の1つです。危機にある哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫を紹介する「消えゆく生命」、「恐竜化石は誰のもの」、人げ原因で個体が減るウミガメを追う「大海原を生き続ける」など、を掲載しています。好評の特製付録、塗り絵ブック「地球に生きる仲間たち」も付いています。

ナショナル ジオグラフィック日本版 2019年10月号<特製付録付き>[雑誌]

著者 : 日経ナショナルジオグラフィック
出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,170円 (税込み)

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