緊張感持ち生きる 三菱ケミカルHD小林会長の健康法

生前に作った墓には人生観を記してある

さらにイタリア留学を経て東大に戻った小林氏。志望先の助手の席が埋まっており、民間企業への就職活動を始めた。子供も生まれ、家計を支える必要もあった。1974年12月、28歳のときに三菱化成に「途中入社」した。「モラトリアム症候群というか、社会に出てサラリーマンになんかなりたくなかった。公認会計士とかの資格試験を受けようかとか、医者になろうかとかと、散々悩んだが、いまさら勉強するのもバカらしい」と腹をくくった。

石油化学分野の触媒、そして記録メディアの研究に従事したが、失敗と挫折の連続だった。研究面で成果を出しても事業収益につながらないケースもあった。記録メディアではCD-Rなどのメモリー材料が世界的に供給過剰になり、累積赤字は1000億円に膨らんだ。

つらくても、楽をしない生き方

危機に直面した際、小林氏によぎるのはイスラエル留学時代の体験。「決して逃げず、知恵を絞り出し、全身全霊で事態を打開する」。改革を断行して黒字化した。20代後半で研究者として入社した小林氏。名門企業の保守本流を走ってきたわけではない。しかし、中核の石化事業が構造不況に陥る中、会社は「変革者」を求めていた。

三菱ケミカルの事業立て直しだけでなく、様々な企業・団体から引っ張りだこで忙しく働いた小林氏。ビジネスマンと言うより、全力を尽くして生きようとする姿勢から「哲人経営者」と呼ばれることもある。ただ、今年は経済同友会代表幹事から退いた。「今も東芝や政府関係の仕事もあるし、忙しい。肉体的につらい面もあるけど、楽をしようとは思わない。明朝、会合があると思うから、酒もある程度で控えられ、体調も維持できる」という。ストレス解消のために特に運動などはしないというが、実は心と体を支える健康法がある。それは「自分を多忙に追い込むこと」だ。

「そは水の音、風の戯れ」。生前に墓を作ると長生きするジンクスがあるというので、横浜市の墓苑に場所を確保した。そこに刻み込んだのが自らの人生観を記したこの言葉だ。「宿命に耐え、運命と戯れ、使命に生きる。ある程度の緊張感を持って必死で生きるほうが健康でいられる」という小林氏。その辞書に「暇」という言葉はなさそうだ。

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