秋を味わうモンブラン デパ地下で買える逸品10選
秋の味覚の代表、栗が出回り始めた。モンブランが楽しみという人も多いはず。デパ地下で買えるおすすめの一品を、専門家が選んだ。
1位 小布施堂
栗10個分 別格のあん
朱雀モンブラン 栗の産地、長野県小布施町にある栗菓子店。地元で採れた栗などを使った、栗あんをまとう「和のモンブラン」だ。通常、モンブランの表面には生クリームを加えた栗のクリームを搾ることが多いが、そうめん状にたっぷりかけたのは、約10個分の栗を裏ごしし、砂糖だけを加えた栗あん。和菓子の練り物を搾る道具、小田巻きを使って搾り出している。「頑張ったごほうびとして食べる最高峰のモンブラン。栗の風味が別格で、味わいがリッチ」(藤原浩さん)
タルト生地の上に生クリームやカスタード、渋皮栗、カシス、濃厚な栗あんを載せた。「カシスの酸味がアクセント。飽きさせない工夫も面白い」(平岩理緒さん)。「栗きんとんを食べているかのような、濃い和栗のあんがよい。ボリュームがあるので2人でシェアしても」(里井真由美さん)
栗の収穫期に本店で1カ月だけ提供する、注文後に裏ごしした新栗を盛りつける「栗の点心 朱雀」を、自宅でも食べてもらいたいと作ったケーキ。伊勢丹新宿店と阪急うめだ本店の常設店のほか、全国の百貨店(10月2~7日仙台三越、23~31日ジェイアール京都伊勢丹、24~30日藤崎本店、11月13~19日松坂屋名古屋店)で催事を行う。
(1)1728円(2)2020年3月末まで(3)https://obusedo.com/
2位 銀のぶどう
バラの形 見た目も味も華やか
モンブランローズ 栗のクリームをバラの花の形に搾った人気商品。女性パティシエが考案した。一枚一枚、手作業で花びらになるよう搾っていく。「見た目がいい」(竿代信也さん)、「バースデーケーキになりそうな華やかさがある」(猫井登さん)
土台のタルト生地には栗をつぶして砂糖を混ぜたペーストとマロングラッセを入れたアーモンドクリームを載せて焼き上げた。「クリームからも、土台のタルトからも、栗の風味がしっかり。食べごたえがあって満足感がある」(瀬戸理恵子さん)。コクを出すために「隠し味でキャラメルソースが入っていて、味わいも華やか」(下井美奈子さん)。大丸東京店などで販売。
(1)680円(2)通年予定(3)https://www.ginnobudo.jp/
3位 パティスリー・サダハル・アオキ・パリ
長方形で食べやすく
マロン フリュイ ルージュ フランスで活躍するパティシエ、青木定治さんが手掛ける。最後までケーキのパーツを同じ比率で楽しめるようにと、1:4の横長に仕上げた。「長方形で食べやすくてうれしい」(スイーツなかのさん)。フランボワーズやブルーベリーの果実入りコンフィチュール(ジャム)を使用。「酸味がアクセント。濃厚な栗のクリームを引き立てている」(山崎彩さん)
クッキー生地の上に、サクサクした食感のヘーゼルナッツのサブレ生地を載せた。「食感の違いが楽しめ、最後まで食べ飽きない。ダージリンティーと合わせて楽しみたい」(猫井さん)。伊勢丹新宿店、ジェイアール名古屋タカシマヤのほか全店舗で販売。
(1)891円(2)11月末まで(3)https://www.sadaharuaoki.jp/
4位 新宿高野
ラズベリーがアクセント
モンブラン 果物専門店の一品。表面を覆うクリームには愛媛や熊本、茨城などの国産栗を使った。栗本来の甘さや風味を出すようにこだわり、独自の無糖のホイップクリームと合わせた。「栗の風味が力強く、生クリームとのバランスが秀逸。モンブランを語る上で外せない名作」(藤原さん)
アクセントにラズベリージャムを入れ「栗の風味が力強く感じられ余韻も豊か。サブレのサクサクした食感とベリーの酸味がなめらかなクリームと対比して楽しく食べられる」(瀬戸さん)。
(1)594円(2)10月末まで(3)http://takano.jp/takano/
5位 アンジェリーナ
パリの老舗、高い完成度
モンブラン デミサイズ パリで人気のサロン・ド・テの老舗。栗にマダガスカル産バニラを加えたペーストは「濃厚ながら焼き栗のような風味」(平岩さん)。
メレンゲの土台にクリームがたっぷり。「栗のクリームとのバランスが最高」(山崎さん)。「完成度が高い」(鈴木兼介さん)。デミサイズは日本人向けで、パリ本店と同じ大きさが約2倍のオリジナルもある。札幌、新潟、日本橋、松山、福岡の三越ほか、東武百貨店池袋、ジェイアール京都伊勢丹に常設店を構える。
(1)594円(2)通年(3)https://www.marronniergate.com/topic/detail/110(マロニエゲート)
6位 ピエール・エルメ・パリ
食感の変化 楽しく
モンブラン ア マ ファッソン 世界的に有名なピエール・エルメ氏が子どもの頃に食べたフランスのアルザス地方のたいまつのようなモンブランをアレンジ。野バラの実のコンポート(砂糖煮)を入れ「酸味が栗のクリームの濃厚なコクと対比をなし、独創性がある」(平岩さん)。
絞り出した表面のクリームは栗を甘く煮てつぶしたペーストと、栗100%のピューレを混ぜ込んでいる。「味が濃厚で質が高い」(鈴木さん)。「食感の変化もあり、飽きのこない味わい」(下井さん)
(1)756円(2)通年(3)https://www.pierreherme.co.jp/
7位 グラマシーニューヨーク
栗の味わい カスタードで豊かに
ロッキーマウンテンハイ アメリカ先住民の小屋に見立てた。木の柱をチョコで、小屋の周りの岩を搾った生クリームで表現した。「独創的な形はパーティーなどで目を引きそう」(猫井さん)。表面に搾った栗のクリームは、和栗とフランス産の栗のペーストなどを混ぜ「なめらかなクリームから栗の風味がきちんと感じられる」(瀬戸さん)。
中心部にはラム酒入り生クリームとカスタード、大粒の栗。「カスタードと合わさって、栗の味わいが引き立つ。デザート感がありぜいたくな印象」(なかのさん)
(1)605円(2)通年(3)http://plaisir-inc.co.jp/
8位 ユーハイム・ディー・マイスター
ラムを使用、酒類と相性抜群
モンブラン バウムクーヘンで知られるユーハイムが、2002年に立ち上げたブランド。マロンクリームには香り豊かなジャマイカラム酒を使用した。「絶妙な味のバランスは見事で、豊かな栗の香りを感じる」(藤原さん)。土台のメレンゲをチョコレートでコーティングしている。「アイデアも面白く、サクッとしたメレンゲは中のスポンジ生地との食感の違いを出している。お酒とペアリングしても相性のいい大人のモンブラン」(なかのさん)。地域によってデザインなどが異なる。
(1)540円(2)通年(3)https://www.juchheim.co.jp/
9位 ジャン=ポール・エヴァン
こっくり濃厚なクリーム
モンブラン 栗のペーストに発酵バターを加えて作るクリームは「こっくりと濃厚で栗感がある」(古屋えり子さん)。「栗の上質なハーモニーが素晴らしくご褒美感満点」(里井さん)
味に深みを出すため、アーモンド粉と砂糖を練って作る自家製マジパンを、焼いたメレンゲの中に入れている。「ほろ苦いうまみがある。生クリーム、栗のクリームと合わせた三位一体の存在感が抜群」(平岩さん)
(1)735円(2)20年4月下旬までの金・土・日・祝日限定(3)https://www.jph-japon.co.jp/
10位 アンリ・シャルパンティエ
甘みと塩味 バランスよく
モンブラン イタリア産の栗のクリームを使用。「軽やかな生クリームと合わせ、非常にやさしくおだやかな味わい」(瀬戸さん)。表面に搾るクリームには生クリームを、内側の土台に載せるクリームにはバターを加えて濃厚な風味に。栗の甘露煮をトッピングした。
土台のクッキー生地にはアーモンド粉やバニラビーンズ、塩を加えた。「甘みと塩味のいいバランス。サクサクの生地がなめらかなクリームと調和し、食べやすい」(なかのさん)。日本橋高島屋などで販売する。
(1)616円(2)通年(3)http://www.henri-charpentier.com/
縁起物の栗 なじみ深く定着
老若男女に愛される栗の風味豊かなケーキ、モンブラン。秋の味覚として楽しみにしている人は多いだろう。
日本人は昔から、栗を重宝してきた。お菓子の歴史研究家・猫井登さんは「勝ち栗という言葉もあるように、栗は縁起物」と話す。各地に栗の産地が点在し、原料に使い、多くの菓子を作っている。「和菓子でも栗あんを糸状に搾り出す小田巻きという道具がある。モンブランは洋菓子だが、日本の菓子ともなじみが深い」(和菓子研究家の山崎彩さん)。こうした栗への思いやこだわりが、日本でモンブランが人気のケーキとして根付いた理由の一つだろう。
日本ではモンブランの上に栗をあしらうタイプをよく見るが、海外では珍しいという。そもそもモンブランとは、フランス語で「白い山」を意味する。フランスとイタリアの国境にある、ヨーロッパアルプス最高峰の山の名前だ。実はフランスから見えるモンブランは、丸みを帯びたドーム型で、イタリアからは鋭く尖った形と見え方が異なる。そのため両国ではケーキの形が少し違う。
フランスのモンブランは、優しいドーム型の山頂をまねて、栗のクリームが丸みを帯びた形。粉砂糖でアルプスの雪を表現している。一方、イタリアのモンブランは生クリームを高く積み上げた、険しい雪山。ひも状の栗のペーストは山のふもとに茂る森を表すとか。
当初、日本では甘露煮を使った黄色いモンブランが多かった。洋風の茶色いモンブランが登場したのは昭和の終わりで、バブル期にかけて流行した。2000年以降に和栗を使ったモンブランが出現。フランスでよく見られる果物と合わせたモンブランも出てきた。最近は専門店が登場したり、注文直後にマロンクリームを搾ったり。ケーキの定番として君臨しながら、進化し続けている。デパ地下以外でも、お気に入りの味を探してはいかが。
ランキングの見方 数字は専門家の評価を点数化。店・ブランド名、商品名。(1)価格(9月28日時点、消費税8%で持ち帰り価格)(2)今シーズンの販売期間(3)店・ブランドのURL。写真は三浦秀行撮影、スタイリングは田口竜基。
調査の方法 スイーツに詳しい編集者らに取材し、主要都市圏(札幌、仙台、東京・横浜、名古屋、京都・大阪・神戸、広島、福岡)2カ所以上の百貨店に出店する店・ブランドのモンブランを22品選定。選考会を開いて専門家11人が試食し、栗の風味や味のバランス、見た目などの観点から1~10位までおすすめ順に順位をつけて評価。編集部で集計した。(大城夏希)
今週の専門家 ▽竿代信也(和栗や代表、栗農家)▽里井真由美(フードジャーナリスト)▽下井美奈子(スイーツコーディネーター)▽スイーツなかの(スイーツ芸人)▽鈴木兼介(東京製菓学校教育部学生課課長)▽瀬戸理恵子(フードエディター・ライター)▽猫井登(お菓子の歴史研究家)▽平岩理緒(「幸せのケーキ共和国」主宰)▽藤原浩(日本フードアナリスト協会常任理事)▽古屋えり子(「料理通信」編集部)▽山崎彩(和菓子研究家)=敬称略、五十音順
[NIKKEIプラス1 2019年9月28日付]
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