ポスト2020のリーダー力(中)

ポスト2020のリーダー力(中)

入山教授は「優れたリーダー個人は両方の資質を有するが、VUCAの時代には特に後者の重要性が増す。例えば、先の孫さん、山田さんに加えて日本電産会長の永守重信さん、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんなどがまさにそう。実際、統計分析の結果を見ても、大きな成果を上げている会社を率いるのは、『トランスフォーメーショナル・リーダーシップ』を一定期間にわたって発揮しやすい経営者だ」と強調する。

また、世界的に成功している企業は例外なく何らかの「イノベーション」を起こしている。入山教授は「かのシュンペーターが『新結合』を唱えたように、イノベーションの源泉は異なる既存知の新たな組み合わせだ。故に、遠くの離れた知と知を組み合わせる『知の探索』の奨励が不可欠だ」と強調する。

魅力的なストーリーを語り、周りを巻き込み行動する

そのためには、もっとダイバーシティー(多様性)を進めるなど、既存の仕組みを壊していく必要がある。新卒一括採用、終身雇用制、任期制の社長といった同質性が高く、短期的な成果しか期待できない仕組みが大勢をなす日本企業で、なかなかイノベーションが起こらないのは理論的には当然のことだ。

「正解を求めても得られないVUCAの時代、ものごとに『意味付け』を行い、周囲を納得させて行動することを『センスメイキング』というが、これもこれからのリーダーシップには不可欠な考え方だ。日本でも優れた経営者はストーリーテリングにたけているが、その背後には人を『納得』させるセンスメイキングがある」。入山教授は指摘する。

「不確実なビジネス環境では、正確で詳細な分析に時間をかけても無駄になることが多い。『これはこういうものだ』と言い切って、魅力的で納得できるストーリーを語り、周りの人を巻き込んで即座に行動する必要がある。例えば、永守さんは『一家に1台の自家用ドローンが飛び交う時代が必ず来る。そうなれば、日本電産のモーターはいくらでも売れる』ということを力強く明快に語っているが、これを聞けば社員にはすごく分かり易いメッセージで、『腹落ち』する」

進化する組織

トランスフォーメーショナル型のリーダーを中心に、共感の輪を創る組織が日本でも元気だが、入山教授は次世代のリーダーによる組織はさらに進化を遂げるという。「これからは副業や兼業、転職が当たり前の時代。そんな時代には人々が横のつながりを重視するようになる。リーダー中心の共感の組織から、各人の価値観、すなわち『バリューベース』で縦横無尽につながる組織に移行する」という。

こうなると、リーダーはこれまで多かった強い統率力を持ったトップダウンの支配型ではなく、奉仕の気持ちを持って部下に接し、その話にもよく耳を傾ける「サーバントリーダー」が主流となる。

このタイプのリーダーは柔軟性があり、フラットな組織を運営することに適している。いまだ主流を占めるヒエラルキー型の組織においても組織内の流動性は高まっている。そして多様性を尊重するネットワーク型の組織が増え、その次には階層が全くない、構成員全体が信頼に基づき、独自のルールや仕組みを工夫しながら目的実現のために組織運営を行っていくようになる。

昨年、「ティール組織」という言葉がはやったが、ティール組織とはまさにこのタイプの組織である。日本では人気女性ユニット「Perfume(パフューム)」のライブ演出などで知られるクリエイター集団「ライゾマティクス」をこの代表例に挙げる識者もいる。

「IT鉄工所」に注目

いま入山教授が注目するユニークな次世代リーダーが率いる企業がある。京都府宇治市に本社のあるアルミ切削加工メーカーのHILLTOP(ヒルトップ)だ。

もともと小さな鉄工所だったが、人工知能(AI)やロボット技術を駆使して、24時間365日稼働の無人工場を新設、米航空宇宙局(NASA)やシリコンバレーの有力企業を取引先とする多品種少量生産、超短納期を実現する「IT鉄工所」に進化した。京都ベンチャーといえば、京セラをつくった稲盛和夫氏や日本電産の永守会長など強烈なカリスマの顔が浮かぶが、ヒルトップの雰囲気は全く違うようだ。

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