PDCA遅すぎる 仕事はまずDo、スピードの先に革新早稲田大学ビジネススクール 入山章栄教授

ポスト2020のリーダー力(中)

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早大ビジネススクール 入山章栄教授
早大ビジネススクール 入山章栄教授

予測不能な「VUCA(ブーカ=変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)」時代、歴史ある名門企業があっという間に淘汰される一方、短期間で市場を席巻するスタートアップ企業も少なくない。どんな企業がイノベーション(技術革新)を生み出せるのか。そんな新時代のビジネスリーダーに求められる条件とは何か。早稲田大学大学院経営管理研究科(早大ビジネススクール)の入山章栄教授に解読してもらった。

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「この間、ビジネス研究家の山口周氏が興味深いことを言っていた。『これからの時代はDPCA』というのだ。私もこれに強く賛成する。20世紀の旧来型の日本企業では、極論すれば誰がリーダーでもPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルをうまく回していれば、一定の成果を得られた。目標や行動がほぼ一定で済む追い付き追い越せ時代だったからだ」と入山教授は話す。

「Plan」からまず「Do」へ

しかし「今は明らかに違い、実行(Do)からサイクルを回す時代なのだ。まずは何より新しいことを思いついたら、さっと実行することが大事になる。どんどん実行し、それに伴う失敗は許容し、そこから大いに学習して次の成功確率を上げる。いま、世界的にイノベーションを引き起こし、成功している企業・リーダーの多くはこのタイプだ」と入山教授は指摘する。一例として、米アマゾン・ドット・コムは70近い新規事業に参入し、その3分の1は失敗、そして1年以内に撤退しているといわれる。アップル創業者のスティーブ・ジョブズが一方で失敗王だったというのも一部では有名な逸話だ。

日本企業が新規事業に乗り出す場合、いまだに多くの場合で「PDCA」が多い。すなわち慎重に計画(Plan)を立て、そしてゆっくりアクションを起こしたら、今度は失敗が見えているのに撤退せず、ずるずると後手に回るパターンだ。

もちろん、日本でも果断にDoからのサイクルを回している企業もないわけではない。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、大型買収と売却を繰り返し、高成長を遂げた。「買収王」で「売却王」だ。

入山教授は19年6月から山田邦雄会長が率いるロート製薬の社外取締役を務める。「ロート製薬もDoからサイクルを回す企業だ。スキンケアブランド『肌ラボ』など新規事業を立ち上げて成功を収めているが、他方で様々な小さな投資を行い、撤退している事業も少なくない。ロートは歴史のある大手企業で山田さんも4代目だが『まず実行』の経営ができる、日本では稀有(けう)なビジネスリーダーの一人だ」という。

リーダーシップとイノベーション

孫氏、山田氏とも非常なリーダーシップの持ち主だが、入山教授によると近年の経営学の世界では「リーダーシップ」には2つの型があるという。「トランザクティブ・リーダーシップ」と「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ」だ。

トランザクティブ型は部下の自己意思を重んじ、まさに取引のように部下とやり取りするリーダー。やや管理型で「アメとムチ」を上手に使い分け、部下一人ひとりといい関係を作るタイプだ。

一方のトランスフォーメーショナル型は組織や部下に成長を促すビジョンを提示するなど、「啓発」を重視するリーダーシップであり、変革志向型だ。20年後、30年後の会社の姿を示して求心力を持てる、ときにカリスマ型といわれるようなリーダーだという。

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