手ごろな価格帯でスーツをオーダーできる専門店が増えている。ハードルが低くなっても技術は一流。せっかく利用するならば、自分の体形をより良く見せる、理想の1着を整えていく過程を楽しみたい。もっとも、満足度の高いオーダースーツを手に入れるにはちょっとしたコツがある。そこで服飾評論家の石津祥介さんと、三陽商会が9月に開店したパーソナルオーダースーツブランド「STORY & THE STUDY(ストーリー&ザ スタディ」(東京・銀座)を訪ね、同ブランド企画課長の猿渡伸平さんに手ほどきしてもらった。
■サイズ感覚は数字や型番ではなく着心地で覚える
――今やスーツが仕事の「制服」とはいえない時代になりました。だからこそこだわりたい、という人が増え、オーダー店が多様化したといわれています。
石津「技術もセンスもある若いテーラーが増えてきましたね。昔は高い技術があってもトレンドは知らないところが多くて、有名店で仕立てても満足できなかったなあ。イタリアやフランスで注文服の勉強をした若手によってセンスが磨かれていったのは、ごく最近のことでしょうね」
――こちらのパターンオーダーにはどういった特徴がありますか。
猿渡「スーツはデザイン、柔らかさ別に4スタイルを用意しています。それぞれのスタイルには15種類ほどのサイズ見本があり、さらにツーピースでは69カ所を補整して仕上げます。開店して2週間で70着ほどの購入があり、中心価格帯は7万円くらいです」
石津「意外と手ごろだね。初心者でも試しやすい。ただし、オーダーにはいくつか心得があるんですよ」
――初めての場合、どんなところに気をつければいいですか。
石津「まず勉強してほしいのはサイズ感覚です。体に合ったサイズというのは数字や型番ではなく、着心地で覚えるものなんです。袖を通した経験が多いほど、自分にとって心地のいいサイズが分かるようになる。襟の幅を広くする、といったようなデザイン的なことはその後の話だね」
――スーツを着慣れていない若い世代には難しそうです。最適なサイズ見本をどうやって選んでいきますか。
猿渡「ヌード採寸のほかに、iPad(アイパッド)を使い体形診断をします。正面と横、2カ所から撮影し、ヌード寸とアイパッドの計測から上半身の特徴を導き出します。なで肩、いかり肩、反身(体の反り)などの体形の特徴を可視化したうえで、肩や上着のポイントを把握してサイズ見本を着てもらい、補整していきます。また、入り口近くにはデジタルサイネージを設置しました。前に立つと3Dの体形イメージが表れます。デジタルを取り入れれば若い世代も店に入りやすいでしょう。ちなみに採寸の時には、スーツに合わせる靴やシャツも持ってきていただけると助かります」

THE NIKKEI MAGAZINE 4月誕生!
Men's Fashionはこの4月、あらゆるビジネスパーソンに上質なライフスタイルを提案するメディア「THE NIKKEI MAGAZINE」に生まれ変わります。限定イベントなどを提供する会員組織「THE NIKKEI MAGAZINE CLUB」も発足します。先行登録はこちら