改正相続法で思わぬ税負担 土地の共有や居住権に注意

写真はイメージ=PIXTA
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民法の相続規定(相続法)が7月に大きく変わったのに伴い、相続の際の税金の取り扱いにいくつか変更があった。改正相続法は相続トラブルの回避に主眼を置くが、よく理解しないまま制度を使うと思わぬ税負担が発生しかねない。

現金請求に一本化

税金の取り扱いでまず注意したいのが「遺留分」についてだ。遺留分とは、配偶者や子などの法定相続人に保障された、遺産をもらえる最低限の取り分のこと。配偶者は4分の1などと決まっている。遺言に偏った配分が書かれていた場合、遺留分より少ない取り分の人は権利を主張することができる。

不足分を他の相続人に請求しても、分けられる現預金がない場合、自宅の不動産などを共有にすることが多い。共有財産の分け方を巡るトラブルは多く、弁護士の上柳敏郎氏によると「裁判になり解決に数年かかることも珍しくなかった」という。

7月の法改正で変わったのは、遺留分に満たない分について現金で請求することになった点だ。相続人同士のトラブルは減りそうだが、思わぬ税負担が生じる可能性があるという。具体例で見てみよう(図A)。

「売却した」とみなされる

これは総額8000万円の遺産を3人の法定相続人で分けるケースだ。問題は次男の取り分。遺留分は遺産全体の8分の1、1000万円だが、遺言には預金500万円としか書かれていなかった。

改正法に基づき、次男は長男や母親に「現金で500万円を払え」と請求する。しかし、長男らの手元に現預金がない場合はどうか。現預金の代わりに不動産などで弁済する「代物弁済」という方法があり、このケースでは長男が相続した自宅以外の土地1500万円のうち500万円を次男名義にした。

結果的に改正前と同様、不動産を共有する形だ。一見、妥当にみえるが「遺留分を満たすために遺産を共有にすると譲渡税がかかる場合がある」と辻・本郷税理士法人の浅野恵理税理士は指摘する。遺留分紛争の解決は現金に一本化されたため、不動産を共有すると実際は売っていなくても税制上は売ったとみなされるという理屈だ。

争い起きない遺言を

図Aのケースでは長男が1500万円の土地のうち、次男に与えた500万円分が不動産の譲渡所得とみなされ、長男に課税される。法改正前には必要なかった税金だ。

このような税負担を避けるためには「そもそも遺留分の争いが起きないような遺言にすることが大切」(上柳氏)。ランドマーク税理士法人の清田幸弘代表税理士は「もし争いになったら代物弁済ではなく、現金で解決する必要がある」と話す。