乃木坂46高山一実さん 小説書くアイドルを変えた本
心が元気になる本&マンガ(2) 乃木坂46 高山一実
A. つらいときほど、あえてつらい小説を読む。全身が痛くて心の痛みを忘れるみたいに。
Q. 本を読む時間はいつ?
A. すきま時間や移動中に読むのは苦手。映画鑑賞みたいにまとまった時間をつくる。
不定期で小説オタクモードに 本は「つらさの麻酔薬」にも
「アイドルの世界を知る私だから、それを"崩した"トラペジウムが書けた」
高山一実さんの"読書熱"は不定期に来る。「私はオタク気質で、時期により違うものに強くハマる。小説オタクのときはひっきりなしに読みます。ちなみに今は宝塚歌劇で、家でも舞台の映像ばかり見ています」
本は高山さんにとって、人生のつらい時期を支えてくれた存在でもある。
「悩みを人に相談するのが苦手で、相談してもなかなかすっきりしない。そんなとき小説が"つらさの麻酔薬"になることが多いです。特に、沼田まほかるさんの本みたいに自分よりつらい人が出てくるものや、あとは頭を使うミステリー」
書き手としての才能も開花させた。昨年11月発売の『トラペジウム』は半年未満で20万部超え。
「自分が読むのは結構どろどろした小説が多いですが、トラペジウムは読者に前向きになってほしくて、昔を思い出しながら、アイドルの夢を追う主人公を書きました。ただ、真っすぐ進んで成功する話では面白くないので、既存の作品と違う切り口を練りました。アイドルの世界を知る私だから、王道を崩した作品が書けたと思います」
『百花』 川村元気著
文芸春秋/1500円(税別)
「ただのフィクションではなく親への考え方が変わりました」
認知症で息子のことを忘れていく母。息子は母を介護しながら、親子2人の忘れられない過去に思いを巡らせていく―─。「川村元気さんは人物描写のリアリティがすごくて、母の認知症という状況が私にも起こり得ると実感させてくれる。親への考え方が変わった1冊です」
『トラペジウム』 高山一実著
KADOKAWA/1400円(税別)
「夢を抱えているのに進めない。そんな人たちに届けたいです」
どうしてもアイドルになりたい女子高生、東ゆう。そのために「東西南北の美少女を仲間にする」という奇想天外な計画に動き出す! 「アイドルは努力だけでは成功できない世界。身近な人を大切にすることが大事、というバックメッセージも込めて書きました」
1994年千葉県生まれ。2011年に乃木坂46 第1期メンバーオーディションに合格しアイドルデビュー。趣味は読書のほか、写真も。剣道2段。16 年4月から雑誌『ダ・ヴィンチ』で『トラペジウム』の連載を開始。
写真/勝岡ももこ 取材・文/臼田正彦
[日経ウーマン2019年9月号の記事を再構成]