中東情勢緊迫、世界株上昇シナリオ変わらず(藤田勉)一橋大学大学院特任教授

両国の対立はイスラム教の二大宗派であるシーア派とスンニ派の対立でもある。スンニ派はイスラム教徒の90%を占めるが、イランではシーア派が90%を占める。両派の教義は共通する点が多いものの、イスラム教の開祖ムハンマドの後継者(カリフ)に対する考えが異なる。聖典(ムハンマドの定めた慣習)を重視するのがスンニ派、指導者の血統(ムハンマドの子孫)を重視するのがシーア派である。

661年にムハンマドと血縁関係にあったアリーが暗殺された。暗殺した側がウマイヤ朝を興し、主流のスンニ派を形成した。シーア派は暗殺されたアリーの血統を重視する。イラン、イラクでは現在シーア派が多数を占めるが、サウジや他のアラブ諸国の国民のほとんどがスンニ派である。

イランはサウジと対立するイエメンのフーシ、イスラエルと対立するシリアのアサド政権(アラウィー派)、レバノンのヒズボラなど各地のシーア派集団を支援している。つまりシーア派の宗主であるイランが、迫害されてきた各地のシーア派を支援しているのである。

米国はサウジ、イスラエルと強力な同盟関係にある。アラブ国家の盟主サウジとユダヤ人国家のイスラエルは本来疎遠だが、いずれもイランを共通の敵とする。「敵の敵は味方」であるため、イランの脅威が高まる中で、トランプ米大統領の仲介もあり、両者の関係は緊密になりつつある。

原油高は米国に恩恵

事件の規模や原油価格の乱高下の割に、株式市場の反応が冷静であるのは、以下の理由による。第1にトランプ大統領が政治的にイランとの対決姿勢を強めているものの、武力行使については「戦闘を避けたいと強く思っている」などと発言するなど慎重な姿勢を示しているためである。第2に世界の原油生産能力には余裕があり、サウジの生産減少分は増産や備蓄で補える。第3に原油価格が適度に上昇すれば、世界最大の原油生産国である米国に恩恵が大きい。これを先読みする格好で株式市場では時価総額の大きいエクソンモービルなど石油株が大きく上昇した。

前述のように複雑な事情があるため、中東情勢の混乱は長期化しよう。しかしシェール革命により、原油の中東依存度はかつてほど高くない。原油価格が上昇すれば、米国のシェールオイル生産がさらに増加しよう。

米連邦準備理事会(FRB)は9月18日に政策金利を0.25%引き下げることを決め、会合後の記者会見でパウエル議長は「景気が悪化すれば、追加の利下げも適切になりうる」と述べた。こうしたことから、多少の波乱はあっても米国と世界の株式相場が大きく崩れる可能性は低いと筆者はみている。

適度な石油価格上昇であれば、むしろ、世界最大の産油国である米国の恩恵は大きい。米国の時価総額の大きいマイクロソフトやアマゾン・ドット・コムなどの業績は依然として好調である。米国主導で世界の株式相場の上昇は続くであろう。日本株も底入れの兆しをみせており、次世代通信規格「5G」のけん引役であるNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどを軸に上昇を続けると思われる。

藤田勉
一橋大学大学院経営管理研究科特任教授、シティグループ証券顧問、一橋大学大学院フィンテック研究フォーラム代表。経済産業省企業価値研究会委員、内閣官房経済部市場動向研究会委員、慶応義塾大学講師、シティグループ証券取締役副会長などを歴任。2010年まで日経ヴェリタスアナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。一橋大学大学院修了、博士(経営法)。1960年生まれ。
近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし
注目記事
近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし