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克明に分かった恐竜最後の日 小惑星衝突の一部始終

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ナショナルジオグラフィック日本版

海底からコアサンプル(パイプを使って柱状採取した地質試料)を引き上げながら、研究チームは、数千万年前の古代生物の残骸である不気味なほど白い石灰岩に目を注いでいた。すると、ふいにくっきりとした分かれ目が表れたかと思うと、その後に黒い層が続いた。

「上の層とはまるで違っていました」と、米テキサス大学オースティン校の研究者で、調査の共同チーフを務めるショーン・ギューリック氏は言う。

この突然の変化こそ、地球の歴史上、有数の大災害があったことを示している。今から6600万年前、メキシコのユカタン半島沖に巨大な小惑星が衝突した。この衝突によって引き起こされた悪夢のような連鎖反応は、動植物種の75パーセントを絶滅に追いやった。そして、絶滅した中には、すべての非鳥類型恐竜が含まれていた。

あの運命の日に起こった出来事

海底から採取したコアサンプルを様々な手法を用いて調査することで、研究チームは、あの運命の日に起こった出来事を時系列に並べることに成功した。あの日、何が起きたのか、事態の進行が分単位でわかる部分もあるほど詳細なタイムラインだ。

研究チームが2019年9月9日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表した内容によると、小惑星の衝突からわずか数時間のうちに積もった大量の物質や、激しい火事によって残された炭などが、コアサンプルから見つかっている。

「研究チームは、小惑星衝突の様々な瞬間を詳しく調べられます」と、米ウィノナ州立大学で衝突クレーターの研究をする地質学者、ジェニファー・アンダーソン氏は言う。「その詳細さには圧倒されます」

人類が存続する間に、同程度の規模の小惑星の衝突があるとは考えにくいが、万一、そんなことが起きれば、地球上の生命進化に大きな影響を与えるだろうと、クレーターのコアの調査に携わった米パデュー大学のジェイ・メロシュ氏は言う。研究が進めば、地球上の生命の脆弱さを深く理解できるようになると、氏は述べている。

大災害をドリルで探る

「チクシュルーブ衝突」として知られるこの衝突の後に何が起きたのか。過去の研究では、世界に散らばった降下物やコンピューターモデルを組み合わせることで、その謎を解き明かしてきた。米ノースダコタ州のある化石産地は小惑星衝突による地震波で生態系がまるごと破壊されたとする説も、こうした研究によって生まれた。

しかし、衝突後に起きた混乱のディテールは、長い間謎のまま残されていた。科学者たちは、衝突によってできたクレーターそのものを調べることによって、これを解明したいと望んでいた。

数千万年という年月の間に、クレーターは何層もの堆積物によって埋められた。そのおかげで、激しい風や波による風化は免れたものの、一方で調査を望む科学者たちを遠ざける原因にもなった。地球史上の重大な瞬間を実際に見るにはドリルによる掘削を行わねばならないわけだ。

科学者たちがクレーターの構造調査に着手したのは1996年。ジョアンナ・モーガン氏が地震探査を行ったときのことだ。モーガン氏は、今回の掘削調査でもギューリック氏とともに共同リーダーを務めている。このときの調査と、2005年に行われた2度目の調査で、「ピークリング」と呼ばれる、大型の衝突クレーターの内側に急速に形成される環状の山の存在を確認できた。この地質構造は掘削にとても向いていた、とギューリック氏は言う。ピークリングからは、巨大クレーター形成の基本プロセスがわかるほか、盛り上がった形状のおかげで、現代の海底から比較的浅い場所でアクセスもしやすくなる。

2016年春、研究チームはついにチクシュルーブ・クレーターに掘削ドリルを入れ、1回あたり約3メートル分のコアサンプルを採取していった。2カ月かけて、採取したコアサンプルは全部でおよそ800メートル分にものぼり、衝突の真下で衝撃を受けた岩石、溶けた岩石の層、通常の海底堆積物への変遷がすべてそろっている。

溶けた岩

採取したコアサンプルを対象とした新たな研究では、岩石のデータとコンピューターモデルを組み合わせて、恐竜が絶滅した日の地質学的な混乱状態を記録した、実に詳細なタイムラインが作成された。

大きな発見の一つが、小惑星の衝突後に物質が堆積した際の速度だ。小惑星の衝突によって、海底は大きく削られ、岩や水は一瞬のうちに蒸発した。クレーター内部の衝撃波の波紋で、固い岩は液体のように流れてそびえ立つ隆起を形成し、それが外側に崩壊することでピークリングができあがった。わずか数十分後、さまざまなものが混ざり合った岩屑がピークリングの上に積み上がり、40メートル近い厚みの層となった。これらの物質には、溶けた岩石層も含まれていた。

次に、猛スピードで戻ってきた海水が、溶けた岩石の間に入り込み、今度は水蒸気爆発が起こった。ここでまた、多くの岩屑が舞い上がった。そうして衝突から1時間以内に、クレーターは「大きな桶の中で激しくかき混ぜられる岩石入りの海水スープ」といった状態となり、クレーターの切り立った壁が崩壊して水しぶきを上げていたと思われる。

「浴槽にバケツの水を注いだときのように、海は落ち着きなくバシャバシャと暴れまわり、水が揺れるたびにより多くの物質が堆積していったのです」と、メロシュ氏は説明する。

岩石は徐々に海底に沈殿していき、さらに大量の岩屑が分厚く積み上がった。衝突後わずか1日で堆積した新たな物質は、全部で約130メートルに達した。

硫黄の蒸発は想像以上だった?

研究チームはまた、クレーターの岩に硫黄がほとんど含まれていないことに気がついた。チクシュルーブ・クレーター周辺にある岩の約3分の1は、硫黄を多く含む蒸発残留岩と呼ばれる鉱物だが、チームが掘削したコアサンプルの中には、これらの鉱物が著しく少なかったのだ。

おそらく、小惑星の衝突で、クレーター内の硫黄を含む岩が蒸発したからだと考えられる。このことは、過去の研究で、小惑星の衝突で3250億トンの硫黄が放出されたとの主張を裏付けるものだ。ただ、硫黄がほぼ完全に存在しないという事実は、3250億トンでも推定が少なすぎることも示唆している。硫黄のガスは硫酸の霧となり、日光を遮って、長年におよぶ地球寒冷化を引き起こしたかもしれない。あるいは酸性雨を降らせて、海を急激に酸性化した可能性もあると、メロシュ氏は言う。いずれにせよ、その衝撃はあらゆる生物に破壊的な影響を及ぼしたことは間違いない。

(文 MAYA WEI-HAAS、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年9月13日付]

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