2019/9/29

チェンジメーカーの育て方

成功と失敗を分けるのは「前を向く」かどうか

欧米の進学校でも、自然の中で心身を鍛える機会を大事にするところは少なくない。長距離のトレッキングや海難救助訓練、農場での馬の世話など内容はさまざまだ。小林氏は「UWCの創始者でドイツの教育者であるクルト・ハーンは、アウトドアの非常に過酷な状況に置かれたときに発揮されるチーム力、リーダーシップが大事だと考えていました。だからUWC ISAKが浅間山の麓にあるようにイギリス校やアメリカ校、ノルウェー校、私が通ったカナダ校も大自然に囲まれた田舎にあるのです」と話す。

「かつては日本の進学校でも遠泳や長距離のトレッキングなど本格的なアウトドア活動を取り入れるところが少なくなかったと思います。今は、どこでも事故の心配ばかりのようにみえて残念です。自分の力ではあらがえないような状況でも自分を律して前に進む。困難に挑み、やり遂げるような経験をもっと教育の本流に取り込めるといいと思います」(小林氏)

困難を乗り越える成功体験の重要性は小林氏自身、UWC ISAKの前身であるインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢の設立に奔走するなかで痛感してきたことだ。

小林氏は「石の上にも三年といいますが、学校設立には6年もかかりました(笑)。本当にこれでもか、これでもかと困難が立ちはだかって……。私は、最初の頃にハードルを越えた体験を仲間に伝えながら、『今回もきっと大丈夫。みんな頑張ろう!』と繰り返し、笑顔で前を向いて進む文化を醸成してきたつもりです。今でも時折難局が訪れますが、チーム全体の意志を持った楽観力に救われています」と明かす。

「松下幸之助さんの有名な言葉に『成功する人は諦めない人だ』とあります。逆に言うと困難に突き当たったとき、ほとんどの人は諦めてしまう。だから目標を達成できず、失敗とされるのです。成功といわれることでも、現実には途中で何度も失敗を重ね、危機に直面しているはずです。それでも粘ってやり抜くから成功するのです。そのためにも大切なのは、小さくてもいいから『挑戦し、乗り越えた』という成功体験です。それを重ねていくうちに楽観力が増強され、諦めない心が育っていくのではないでしょうか」(小林氏)

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小林りん
 学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事。都内の高校からカナダのUWCに編入。1998年に東京大学経済学部を卒業した後、国際協力銀行などを経て2005年にスタンフォード大学大学院で国際教育政策学の修士課程を修了した。国連児童基金(ユニセフ)のプログラムオフィサーとしてフィリピンでストリートチルドレンの教育問題にかかわり、14年に現在の学校の前身であるインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)を設立。UWCの加盟承認を受け、17年8月に現在の校名になった。

(ライター 渡部典子)

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