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泊まれる「おとぎの家」 とんがり帽子のトゥルッリ

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/9/25

ナショナルジオグラフィック日本版

イタリア、プーリア州の小さな町アルベロベッロで、トゥルッリが連なる風景を眺める旅行者。この個性的な住居は石灰岩で作られていて、ドーム型の屋根が特徴だ(PHOTOGRAPH BY RENATAAPHOTOGRAPHY, GETTY IMAGES)

イタリア南東部、イトリア渓谷の周辺をドライブすると、田舎道のいたるところでおとぎ話からそのまま抜け出てきたような家々が見られる。円錐形のとんがり屋根と白い壁が特徴の「トゥルッリ」だ。モルタルを使わずに石灰岩を積み重ねる伝統的な方法で建てられており、今でも実際に住居やホテルに使われている。

トゥルッリを見つけるのは簡単だ。イトリア渓谷には数千ものトゥルッリがあり、そのうち1500軒以上が、港湾都市バーリから南に65キロほどの場所にあるアルベロベッロに集中している。アルベロベッロのトゥルッリの中には、14世紀に建てられたものもある。この家屋群は、1996年にユネスコの世界遺産に登録された。

アルベロベッロ地区に人が住み始めたのは約1000年前のことで、それと同時にトゥルッリの建設も始まったと考えられる。だが、その形の起源ははるかに古く、紀元前8世紀~5世紀にギリシャ人が南イタリアを植民地化した際に持ち込んだという説もある。古代ギリシャの墳墓であるトロスにも、同様のドーム型の屋根がある。ちなみに古代ギリシャ語のトゥルッロス(τρούλος)は、ドームという意味だ。

1947年、トゥルッリの家の外で縫い物をする女性たち(PHOTOGRAPH BY ALFRED EISENSTAEDT, THE LIFE PICTURE COLLECTION, GETTY IMAGES)

プーリア州のトゥルッリの屋根の上には、よく小さな尖塔がある。その形はさまざまで、ひょっとするとトゥルッリを建てた大工を示していたのかもしれない。一部のトゥルッリの屋根には、十字架や邪眼など、占星術やキリスト教、多神教のシンボルが描かれている。こうしたシンボルは多くの人の興味を引いているが、トゥルッリをテーマにした本の著者であるイタリア、ナポリ大学の現代史の教授アンヌンツィアータ・ベッリーノ博士によれば、最初からあったものではないという。「観光客の好奇心を満たすため、長い時間をかけて考え出されたのです」と同氏は話す。

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