日本人女性の閉経中央値は50.5歳。その前後5年ずつ、45~55歳が更年期と呼ばれる時期ですが、仕事の責任が増え、キャリアの充実期にも重なります。中には、更年期症状が原因で昇進を諦めたり、退職を選択したりする人も。キャリアの大事な時期を乗り切るためにも「ホルモン補充療法がおすすめ」というイーク表参道副院長で産婦人科医の高尾美穂さんに「ホルモン補充療法」のメリット、デメリットを聞きました。
―― 更年期症状で来院する患者さんの症状はどんなものが多いですか。
高尾美穂さん(以下、敬称略) イライラや落ち込み、涙もろくなる、緊張が強いなど、メンタル面のコントロールがうまくいかずに相談にやって来る患者さんが多いなと感じます。「なんとかして生活の質を上げたい」という相談ですね。
更年期障害の治療の第1選択はホルモン補充療法(HRT)です。必要最小限の女性ホルモンを足してあげることで、更年期の変化を緩やかにするもので、1週間で75%のホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)が改善する(※)ほど、とても良く効きます。
(※)Cochrane Database Syst Rev. 2004 Oct 18;(4):CD002978
ホルモン補充療法は3カ月に1回ペースで通院、保険適用
女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが配合された経皮吸収タイプの製剤や塗るタイプのエストロゲンが主流で、おなかや腰回りに貼って、3日に1回新しいものに交換します。通院は3カ月に1度ペースで、保険が適用されます。
HRTで補充するエストロゲンの量は、これまで自前で分泌されていたエストロゲン量の1/3程度なんです。意外と少ないでしょう? ほんの少し足してあげるだけで更年期のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)がぐんと高まるので、更年期症状が原因で昇進を断ったり、退職したり、なんてもったいない話。一人で悩まず、婦人科に相談してほしいと思います。