本当はどうなの? 常識覆すお酒と血糖値の関係お酒と血糖値(上)

日経Gooday

糖尿病の患者はお酒を控えるように指導されるという。その一方で、お酒は血糖値を下げるという話も聞く。どちらが本当なのだろうか。写真はイメージ=(c)monticello-123RF
糖尿病の患者はお酒を控えるように指導されるという。その一方で、お酒は血糖値を下げるという話も聞く。どちらが本当なのだろうか。写真はイメージ=(c)monticello-123RF
日経Gooday(グッデイ)

多くの人が気にする血糖値、お酒との関係はどうなのだろうか。血糖値を上げるという話がある一方で、下げるという説もある。どちらが本当なのか。酒ジャーナリストの葉石かおりが、糖尿病専門医で、緩やかな糖質制限「ロカボ」の提唱者、北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟さんに直撃して話を聞いた。

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中高年齢層の人が気にする健診の項目は数多くあるが、近年の「糖質制限」ブームなどもあり、特に注目度が高まっているものといえば「血糖値」だろう。

私に限らず、お年頃(中年)の左党であれば、血糖値を気にしている人は多い。肥満を気にするのはもちろん、将来の糖尿病を恐れている人も少なくない。ご存じの方も多いと思うが、血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度のことで、血糖値が高い状態が続くのが、多くの合併症に罹患するリスクを負う、恐るべき「糖尿病」だ(詳しくは後述)。

実際、自身の周囲にいる左党たちの状況をよーく見ると、糖尿病予備群、あるいは既に糖尿病という方がかなりの確率でいる。まあ、彼らは糖尿病や痛風の薬を飲みながら、ビールをチェイサーに日本酒を飲むような人なのでサンプルにはならないかもしれないが……。

お酒は血糖値を上げるのか、それとも下げるのか

筆者の場合、気が気でないのは、母を筆頭に親戚の多くが糖尿病、という生粋の糖尿病家系だということ。叔父に至っては糖尿病の合併症のため、人工透析を長年行った後、壊疽(えそ)により両膝下を切断している。叔父の例は極端にせよ、直系の母と同様の糖尿病がいずれ私にも起こるのではないかと心配でならない。そんなこともあって、それはもう「血糖値」という言葉には敏感になっている……。

最近では、食後に血糖値が急上昇する、いわゆる「食後高血糖」のリスクも知られるようになってきた。食後高血糖の人は心筋梗塞などの死亡リスクが上昇するという。また、食後高血糖は、老化の原因の1つ「糖化」を進めるという話も過去の記事で紹介した(「老化を促進させる『糖化』 実は飲酒と密接な関係が…」)。

この多くの人が気にする血糖値、お酒との関係はどうなっているのだろうか――。

このテーマは、私は以前からずーっと気になっていた。というのも、糖尿病患者の人はお酒を控えたほうがいいという話を聞いたことがある(実際、糖尿病の私の母は医師からお酒を控えるように言われた)一方で、アルコールは血糖値を下げるという話も耳にするためだ。

後者についてよく言われるのが、「飲んだ後の〆のラーメン問題」である。左党の間でまことしやかに言われているのは、「酒を飲むと血糖値が下がるので、糖質たっぷりのラーメンを食べたくなる」ということ。私も今でこそ〆のラーメンは控えているけれど、酒を飲んだ後にラーメンが食べたくなるというのは同感である。これはやっぱりアルコールに血糖値を下げる効果があるからなのだろうか?

血糖値、そして糖尿病といえば、この方に聞くしかない! と、日経Goodayでもおなじみ、北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田さんに話を伺った。

食後高血糖は、働き盛り世代にとって“ど真ん中”の問題

本題の「お酒と血糖値の関係」に入る前に、まず、糖尿病のエキスパートである山田さんに、「高血糖」そして「食後血糖値」のリスクを確認しておこう。

「糖尿病の原因となる『高血糖』、そして『高血圧』や『脂質異常』は、放っておくとドミノ倒しのようにさまざまな病気を発症します。この現象は『メタボリックドミノ』と呼ばれます」と山田さんは説明してくれた。

「ご存じのように、血糖値とは血液中のグルコース(ブドウ糖)の濃度のことです。糖質を摂取すると、その後血糖値が上がります。血糖値が上がると、インスリンというホルモンが膵臓(すいぞう)から分泌され、血糖値は下がります。このように私たちの体には、血糖値を一定に保つ仕組みが備わっているのですが、インスリンがうまく分泌されなかったり、効きが悪くなると、血糖値が下がらず、血糖値がずっと高い状態になってしまいます。これが糖尿病です」(山田さん)

「糖尿病は病状が進むと、慢性腎臓病になり人工透析を受けることになったり、網膜症を起こして失明したり、神経障害を起こして脚を切断するといった深刻な合併症を引き起こします。さらに、動脈硬化を進め、脳卒中、心筋梗塞などのリスクも上がります。最近では、日本人の最大の死因であるがんのリスクを高めることも分かってきました」と山田さんは説明する。

メタボリックドミノ! そして、がんのリスクを高めることにもつながるとは! 高血糖、恐ろしい……。

「実はこのメタボリックドミノの過程で、今最も注目されているのが『食後高血糖』なのです。食後高血糖とは、その名の通り食後に血糖値が急上昇することを指します。食後2時間時点で血糖値が140mg/dLより高くなった人は食後高血糖と診断されます。これは、糖尿病と診断される前段階である『糖尿病予備群』に該当する状態です」(山田さん)

最近は「血糖値スパイク」などと言ってよく話題になるものの、「そんなの大した問題じゃないのでは?」と思っている人も少なからずいると思う。しかしそれは大間違い。食後高血糖の悪影響は広範囲に及ぶのだと山田さんは話す。