箸が止まらぬ「悪魔とシビレ」 19年下期の加工食品
食品ブレイク予測 2019下半期 加工食品編
先日、「炒飯・丼… 冷食は『がっつり飯』激戦 19年下半期」で紹介したように、2019年下半期に各社が力を入れる冷凍食品は、男性を狙った「大容量ガッツリ系」だ。加工食品分野でもご飯に合わせて「食べるラー油戦争」が再燃するほか、ふりかけにも相次いで新製品が登場する。日本アクセス 秋季フードコンベンション2019「バイヤーズグランプリ」で上位にランキングされた、バイヤーと日経トレンディ編集部の注目の加工食品を紹介する。
しびれが効いたラー油戦争
約10年前に勃発した「食べるラー油戦争」が、19年秋に再現されようとしている。「桃屋のしびれと辛さががっつり効いた麻辣香油」(桃屋)vs「麻辣おかずラー油」(エスビー食品)の戦いだ。
09年、「辛そうで辛くない少し辛いラー油」を発売し、ラー油をご飯にかけてガツガツ食べる新たな食習慣を世の中に広めたのが桃屋。この「食べるラー油」は爆発的にヒットし、10年にはエスビー食品が「ぶっかけ!おかずラー油チョイ辛」で参入。2社がしのぎを削るなか、食べるラー油市場は120億円近くまで膨れ上がった。
実はこのとき、桃屋は既に次の商品を開発していた。それは、ラー油に花椒を加え、しびれる辛さにした新機軸のラー油。「ただ、当時花椒特有のシビ辛は認知度が低く、商品化は見送った」(桃屋開発部・品田直明部長)。
その後、原料や配合を変え、商品を改良。そして近年、外食発の麻辣ブームが起こり、好機と判断した桃屋が満を持して8月末に麻辣香油を投入した。くしくもエスビー食品と発売時期が重なり、ガチンコ対決につながった。
いずれも「麻辣」をうたった食べるラー油だが、商品設計は大きく異なる。桃屋の麻辣香油は中国で使われる花椒に加え、和歌山県特産の和山椒も配合。ゴマを多く利かせ、揚げたガーリックやオニオンのサクサク感が際立つ。口にして少したってからしびれと辛さがじわっと広がり、和山椒の爽やかな香りが鼻に抜ける重層な風味だ。
一方、エスビー食品の麻辣おかずラー油は最初からガツンと辛さとしびれが口中を貫く。配合されたナッツ類の油分で全体的にしっとりした食感。激しいシビ辛を求めるなら、こちらがお薦めだ。エスビー食品は、「麻辣湯」や「麻辣醤」など関連商品を発売し、品数の多さで麻辣の戦いを総合的に進める。
大人向けのふりかけが続々登場
ローソン発で天つゆと天かす、青のりを混ぜたクセになる味の「悪魔のおにぎり」がヒットするなか、ふりかけでもインパクトがあり、病み付きになりそうな「悪魔系」が下半期に登場する。本命は、ご飯に具材を混ぜ込んで握るだけで悪魔のおにぎりを簡単に作れる「混ぜ込み 悪魔めし」(浜乙女)。子供や女性でも食べやすいように味をマイルドにしてファミリー層を狙う。商談は絶好調で既に計画の4倍を受注。生産が追い付かない状況だ。
対抗馬は「誘惑のふりかけ」(大森屋)。サクサクの天かすを使い、マヨネーズ風味の海老イカ味、ガーリック風味の牛ブタ味の2種で、既存のふりかけとは一線を画す、こってり味を提供。「健康ブームの対極にある、ガツガツお腹いっぱい食べたい欲求に応えたい」と、商品担当の大森屋・植田宏志氏は話す。にんべんや永谷園もご飯が進む濃厚なふりかけを展開。健康系からの揺り戻しが顕著なシーズンになりそうだ。
大手食品卸の日本アクセスが19年7月に開催した、東西会場で延べ1150社出展の大型展示商談会「フードコンベンション」の特別企画。Mart読者会員が選ぶ「Mart新商品グランプリ」の「プロ版」で、エントリーした77の新商品に、スーパーやコンビニなど流通各社の食品バイヤーが投票。加工食品、冷蔵食品、冷凍食品、アイスの4部門で得票数が多い順にランキングした。日本アクセス、流通専門誌「DIAMOND Chain Store」とのコラボ企画。
(文 高橋学、写真 中本浩平)
[日経トレンディ2019年10月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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