なぜ株価上昇?「自社株買い」を完全理解(窪田真之)楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

自社株買いの意味は「買って株価を押し上げる」ことではありません。「1株当たりの利益を増やす」ことにあります。自社株を買えば発行済み株式数が減り、その分、稼いだ利益総額が変わらなければ1株当たり利益が増えます。1株当たりの利益が増えれば、好感して株価水準が高くなることが期待されます。

40個のケーキ 10人で分けるか、8人で分けるか

少しわかりにくいかもしれないので「たとえ話」で説明しましょう。40個のケーキ(企業の純利益)を株主10人で均等に分け合うことを考えてください。1人4個ずつもらえます。ここで、企業が自社株買いを実施し株主2人の株を買い取ったとします。すると株主数は8人。8人で分ければ1人当たりのケーキの割り当ては5個に増えますね。自社株買いとは、株式数を減らして1株当たりの分け前を増やす行為といえます。

大まかな自社株買いメリットの計算法

次に発表された自社株買いが株主にどのくらいのメリットがあるか、おおよその見当をつける方法をお教えしましょう。

発表通りすべて自社株買いが実行されると発行済み株式数が何%減るのかをみます。具体的に見てみます。以下は自社株買いの常連、NTTドコモが4月に発表した自社株買いの概要です。

(1)取得対象の株式の種類:自社の普通株式
(2)取得し得る株式の総数:1億2,830万株(上限)(発行済み株式総数に対する割合3.85%
(3)株式の取得価額の総額:3,000億円(上限)
(4)取得期間:2019年5月7日から2020年4月30日
(5)取得方法:東京証券取引所における市場買い付け

 

ここでの一番の注目は太字の発行済み株式総数に対する割合です。3.85%となっています。上限株数を買い付けると、発行済み株式総数が3.85%減少します。ということは、1株当たり利益がおおむね3.85%増えるわけです。

つまりPER(株価収益率)などの株価評価が変わらなければ、自社株買いで1株当たり利益が3.85%増加し株価が3.85%程度上がる、と期待することができるわけです。厳密な計算は少し異なる結果となりますが、ざっくりしたメリットの把握としてはこれでオーケーです。

日本株は買い場の見方を継続

日本株は買収価値や配当利回りから見て「割安」と判断しています。米中貿易戦争がエスカレートする不安で日本株は売られてきましたが、不安があって「割安」なうちにしっかり日本株に投資しておくことが長期的な資産形成に寄与すると思います。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
窪田真之

楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(当時)入行。99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年所長。大和住銀では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。
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