なぜ株価上昇?「自社株買い」を完全理解(窪田真之)楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

自社株買いは増配と並ぶ株主への利益配分手段ですが、10年以上前までの日本企業はあまり熱心でありませんでした。渋々、仕方なくやっていた企業もありました。そのころよく聞かれた自社株買いの理由は「持ち合い解消売りの受け皿」でした。

日本では上場企業同士が互いの株を持ち合う慣行がありましたが、財務リストラやガバナンス上の問題から持ち合いを解消する動きが広がりました。その「持ち合い解消売り」の事実上の受け皿として、自社株買いを行う会社が増えたわけです。

ところが、10年ほど前からは自社株買いの目的が変わってきました。ようやく本来の目的である「株主への利益配分」として行う企業が増えたのです。加えて最近、もう1つ目的が加わりました。「財務戦略としての自社株買い」です。

自社株買いのもう1つの理由

長引く低金利で借入金の利息負担が軽くなる中、増配を続ける日本企業にとっては配当負担の方が重くなってきました。そこで注目を浴びるようになったのが財務戦略としての自社株買いです。自社株買いを行えば発行済み株式総数が減り、その分配当金総額が減り、配当負担を軽くすることができるわけです。借入金が少々増えても、低金利下で金利負担は軽く済みます。発行済み株式数が多い上場企業は、財務戦略として自社株買いを行ったほうが良いと判断するようになったのです。

増配は株主にはメリットだが…

株主への利益還元策として、自社株買いと比較されるのが1株当たりの配当金を増やす「増配」です。増配は株主にはメリットがありますが、企業にとっては配当負担が重くなるだけで直接的なメリットがありません。

そこで米国では株主還元として、増配よりも自社株買いを選ぶ企業が増えています。投資家もそれを歓迎する傾向があります。日本でも、借金の返済が進み財務が良好な企業が増えたこと、低金利の長期化で借り入れ負担が軽くなりつつあることから、今後は増配よりも自社株買いを重視する企業が増えると考えられます。では、なぜ自社株買いは株主への利益配分になるのでしょう?

自社株買い=利益配分の理屈

自社株買いとは文字通り、上場企業が自分の会社の株を買い取ることです。例えば「トヨタがトヨタ株を買う」ようなことです。なぜそれが株主への利益配分なのでしょう。

「自社株を買うんだから、株価が上がるんでしょ」と、自社株買いの意味を「買いが入る」という需給材料のみで考える人もいます。確かに「自社株買い」発表後の株価は短期的に大きく上がることもあります。短期筋が自社株買いをネタに買い上がるとそうなります。でも、それだけなら短期的材料でしかなりません。企業価値が変わらなければ、いずれ売られて元の株価に戻ります。

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