第4の携帯電話事業者として、2019年10月の新規参入を打ち出している楽天の子会社「楽天モバイル」。だが19年9月6日の発表会で明らかにされたのは、10月開始と噂されていた本格サービス開始を実質的に延期するとともに、当面は5000名限定の「無料サポータープログラム」に向けてのみサービスを提供するというものであった。がっかりした人も多いかもしれないが、すでにMVNO(仮想移動体通信事業者)として提供しているサービス内容の変更にはメリットも多い。
当初は5000人限定、無料でサービスを提供
このプログラムは19年10月1日から、最大で20年3月31日まで実施される。楽天モバイルが当初本格サービスを提供する予定の東京23区と大阪市、名古屋市、そして神戸市に住んでいる18歳以上で、楽天モバイルに新規、あるいは番号ポータビリティーで加入することが申し込みの条件となる。申し込みが多い場合は抽選になるという。

このプログラムに加入した人は、期間中音声通話やSMS、データ通信など全てのサービスを無料で利用可能になる。ただしその代わり、楽天モバイルとKDDIの周波数帯、および4G回線で音声通話するための「VoLTE」に対応した端末を自ら用意する必要がある。このほか回線品質のテストやアンケートへの回答も求められる。また無料サポータープログラムは20年3月末、あるいは楽天モバイルがそれより前に本格サービスを開始した場合、自動的に終了するとしている。なお、楽天モバイルのサイトでは、現在MVNOとして提供しているスマートフォンで、10月以降の「無料サポータープログラム」を含む本格サービスに対応したものを一覧できるようになっている。楽天モバイルによると、現状iPhoneは対応機種に含まれていない。

先にも触れた通り、楽天モバイルが当初サービスを提供するエリアは東京23区と大阪市、名古屋市に限られる(神戸市ではKDDIのローミングになるもよう)。だが楽天モバイルはKDDIとネットワークローミングの提携をしていることから、楽天モバイルのエリア外でもKDDIのモバイル回線を通じ、通話や通信は可能だ。「無料サポータープログラム」ではKDDIの回線を経由した通話や通信も無料になる。
また楽天モバイルでは、独自に開発した「Link」というアプリを通じ、IP電話やチャットなどのコミュニケーションやコンテンツを統合的に利用できる仕組みを用意しているという。もちろん通常通り「VoLTE」での音声通話も可能だが、楽天モバイルのエリアから出てKDDIのエリアに入ったときや、その逆のときに、当初は通話が切れてしまうという(20年3月までに対応予定)。

回線品質は未知数、使うならサブ回線として
発表内容を見る限り、正直なところ19年10月時点の楽天モバイルのサービス内容は試験サービスレベルであり、正式サービスと言うにはほど遠い。
楽天モバイルはその理由を「ネットワーク仮想化」という新しい技術をネットワークに全面的に採用しているためだと説明する。要するに携帯電話のネットワークの多くの部分をクラウドで構築した世界初のネットワークとなることから、念を入れてネットワークの安定性を検証したいということだ。その説明が理由のすべてかどうかは不明だが、結果として基地局の設置は遅れており、総務省からも指導を受けている。そのため本格サービスに踏み込めなかったのだろう。
