Men's Fashion

紺無地スーツ、印象変える着こなしはこれだ

How to

2019.9.24

MEN'S EX

紳士のあるべき本物の装いを語る上で欠かすことが出来ないスーツ。ここ日本において考えられる、最もシンプル且つ象徴的なそれは、“紺無地スーツ”といえるだろう。




そこで今回、ドレスクロージングを長きに亘り牽引してきた装いの識者3名とともに、紺無地スーツの“究極”を考察。見えてきたのは、ひとくちにネイビーとはいっても、シルエットやディテール、合わせる色で印象が大きく変わるということ。そして、導き出されたのは、3つのキーワードだ。「○○ビズ」が進む今こそ、究極の紺無地スーツについて考えてみてはいかがだろうか。

(左)森岡 弘さん/ファッションディレクター メンズクラブ編集部にてファッションエディターとして従事。退社後、独立。現在は芸能人、スポーツ選手、政治家、企業家、文化人など著名人のスタイリングで幅広く活躍。2018年11月号より「森岡 弘の自分デザイン考個学」を連載中。

(中)中村 達也さん/ビームス クリエイティブディレクター ビームスのメンズドレスセクションを統括するクリエイティブディレクター。トレンドを丹念に分析し、論理的でわかりやすく解説する手腕は服飾業界随一。本誌「先取り上手のリアルスタイル」を連載中。

(右)佐藤 英明さん/ペコラ銀座 オーナー '88年に渡仏し、パリの仕立て屋で修業後、ミラノに移り、名テーラー「マリオ・ペコラ」で修業を積む。帰国後、2000年に銀座に「ペコラ銀座」をオープン。弊誌にも、生地の達人として数多く登場。日本を代表するテーラーの一人だ。

M.E. スーツの基本中の基本「紺無地スーツ」は時に、そのシンプルさ故に難しいことも……。そこでメンズドレス界を違う立場から牽引するお三方にお話を伺いたくご参集頂きました。よろしくお願い致します!

中村 いやー、紺無地とはなかなか難しいお題ですね。確かに、着方によって、「とても無難」にも、「かっこよく」もなりますからね。

佐藤 正直“究極”に難しいテーマだと思います(笑)。そもそも、ネイビー無地のスーツをここまで多くの人が着用する国は、世界を見渡してもまずないと思いますよ。

中村 日本のネイビーへの傾倒は、恐らく’90年代に流行したブレザー文化から来ていると思います。それ以前は、ビジネススーツといえば、グレーが主流でした。現在、紺無地スーツは日本で最もポピュラーなスーツスタイルになっているため、好印象なビジネススタイルをつくるためには欠かせないアイテムと言えます。

森岡 私は日頃エグゼクティブな方にアドバイスさせて頂いてますが、彼らが最も重要視するのは、相手に誠実さや信頼感のある印象を与えられることだと思います。そうした意味では、紺という色は当然、最適です。ただし、その色合いだけに頼るのではなく、着る人の体型に合い、バランスの取れた、フィットでこそ効果を発揮します。

中村 確かに、紺無地スーツに白シャツ、ネイビータイといったスタイルは、誰にも嫌な印象を与えません。ビジネスマンには重要な“野暮ったくもなく、派手でもない”という後ろ指をさされない装いといえるでしょう。

佐藤 その点は私も同意見で、上品かつ相手に嫌な印象を与えないシンプルさは紺無地スーツの特徴ですね。ただ、私の意見としてはネイビーという色がフォーマルな佇まいを連想させることを考えると、スーツの仕立てや着こなしでより紳士的な“風格”を目指せるのではないかなと。

中村 濃紺無地のスーツが格式の高さを印象づけることは世界のどの国においても、共通認識として持たれていますからね。

佐藤 私は特にまず生地のウエイトで雰囲気を出すのが最善手と思います。以前、テーラーだった父の仕事場で見たイタリア製生地は、他の生地と全く違い、美しさと風格があって印象的だったことが忘れられません。

M.E. そして形はスリーピースなんですね。

佐藤 はい、やはり重厚感が違います。胸元は、ベストを挿し込むことでネクタイの見える面積が少なくなる分、パープルやえんじ色の色気のあるタイを挿し込んでもいやらしくならないので、こちらもオススメです。

中村 佐藤さんのおっしゃる通り、パープルのタイを使うことには、大いに賛成です。ただし、パープルの中でも、スーツの色によって赤みの強いものと、写真のような青みの強いものを使い分ける必要があると思います。

M.E. スーツの型では、どのようなものがよいとお考えでしょうか。

中村 私の立場からすると、紺無地といえど洒落感を求めるお客様が多いので、その点は大事にしています。それもあって、型はダブルブレステッドをオススメしています。なかでも、風合いがあるメランジ生地を選べば、紺無地スーツに奥行きが生まれます。

佐藤 確かに、写真のような同系色のメランジは、生地の表情を豊かにすることで、全体の印象を柔らかくする効果があると思います。

森岡 ビームスに訪れるお客様だと紺無地といっても、生地へのこだわり同様、“着方”にも強いこだわりがあるのではないでしょうか。

中村 おっしゃる通りです。そのようなお客様には特に、先にあげたダブルブレステッドのスーツのパンツをノークッションで仕上げることをよくオススメします。最初に森岡さんがおっしゃっていたように、全体のバランスがとても大事だと私も常に考えています。

M.E. スーツを着ない働き方が市民権を得始めている今だからこそ、スーツの基本に立ち返り、着こなすことで好印象への近道となるでしょう。ありがとうございました!