いつ読んでも泣ける初めての絵本 俳優伊藤健太郎さん
心が元気になる本&マンガ(1) 伊藤健太郎(俳優)
役者人生の原点にあるのは、一冊の絵本だった!? 話題作『惡の華』の公開を控え、原作マンガをどう読んだかも聞きました。
A. もともと読書は苦手でしたが、今は「これは」と思った本を。少年マンガはめちゃくちゃ読みます!
Q. 伊藤さんにとって読書とはどんな行為?
A. 新しい扉を開いて、知らない世界を見せてくれるもの。
救いがあるから前を向ける 本は大切なアイテム!
主演映画『惡の華』の原作マンガを読了後、伊藤健太郎さんは中学2年の主人公・春日と自らの思春期を重ね合わせた。
「グサっと来るけど、救われる。『惡の華』で、一つ前に進めた気がします」
「春日には、思春期を過ぎた男には理解できる部分がすごくあって。隠したくなるような部分も全部むき出しにして、人間のリアルを伝えている、純粋なマンガだと思いました。春日を演じるのが楽しみでしたし、演じ切った今、役者としてちょっと前に進めたかなと思うんです」
自分とは別の人間を演じることは、経験したことのない感情を味わうことでもある。『惡の華』でも、原作の言葉ひとつひとつが心に刺さった。
「刺激的で、割ととんでもない内容ですが(笑)、最後に救われる。その救いがあるから、この作品に触れると前に進めそうな気持ちになるんです」
伊藤さんの心に残る本にも、どこかに救いがある。幼少時から「読んでもらうたびに泣けた」という絵本では、愛犬の死を通して思いを伝えることの大切さを実感。芸術家・岡本太郎の著書からは、厳しくも熱いメッセージに励まされ続けている。
「読んだ本で悔いのない生き方、自分らしい生き方に気づかされると、悩みも迷いも軽くなります。最近、役づくりでもなんでも、ゼロスタートより"1スタート"のほうが、より世界を広く見ることができると感じるんです。本を読んで知ることは大事。本も映画も人生を豊かにしてくれる大切なアイテムです!」
『ずーっと ずっと だいすきだよ』
ハンス・ウィルヘルム作、久山太市訳
評論社/1200円(税別)
「気持ちを言葉で伝えることの大切さを知りました」
「ぼく」と犬のエルフィーは一緒に大きくなった。ある日、エルフィーは死んだ。悲しみのなかで、ぼくにはひとつ慰めがあった……。
「本が面白いと思った最初の1冊。大好きで、子供の頃、よく読んでもらいました。いつ読んでも、今でも泣ける。家族や仲のいい友達ほど、大切に思っていると言葉で伝えることが大事なんだと思います」
『惡の華』
押見修造作 講談社/429円(1巻、税別)※全11巻
「変態的で過激でキツイけれど人間味と普遍性にあふれてる」
ボードレールを愛する中学2年の春日高男は、思いを寄せる佐伯奈々子の体操着を思わず盗む。その様子を目撃した仲村佐和からの、変態的な要求に翻弄されていく。
「実は人間の普遍性を描いた純粋な作品。読みながら10代の頃を思い出したり、しがらみをなくした自分はどうするのか考えるのも面白い!」
『自分の中に毒を持て〈新装版〉』
岡本太郎著 青春文庫/740円(税別)
「自分らしい生き方の指針。役者にとってバイブルです」
「芸術は爆発だ!」の名言を残した芸術家・岡本太郎が、「常識人間であること」を捨て、常に興奮と喜びに満ち、自分らしく生きるための方法を説く。
「人生論ですが、役者業とつながる部分が多いんです。『一度死んだ人間になれ』『個性は出し方』など、熱い一言一言に奮い立たされています!」
(c)押見修造/講談社 (c)2019映画『惡の華』製作委員会
1997年東京都生まれ。2014年にドラマデビュー後、話題作に多数出演。18年のドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)で幅広い層から人気を集める。主演映画『惡の華』(写真)が9月27日に公開。
取材・文/松田亜子
写真/YUJI TAKEUCHI(BALLPARK)
スタイリング/高橋 毅(Decoration)
ヘアメイク/山田今日子
トップス1万8000円/CULLUNI (Sian PR 03-6662-5525)
パンツ3万4000円/the BLEU(ADONUST 03-5456-5821)
シューズ2万3000円/Pantofola d'Oro(ADONUST MUSEUM 03-5428-2458)
[日経ウーマン2019年9月号の記事を再構成]