密着・アマゾン放火の現場 悪循環を止める手は?

日経ナショナル ジオグラフィック社

かつては雨林だった土地で飼われているウシ。牧場主は、ウシが食べる草地を増やすために森林を伐採する(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES)

森林破壊は2019年から急速に進み、その結果、アマゾン盆地南部では何千件もの火災が起こるようになった。ブラジル国立宇宙研究所のデータによると、森林火災は2018年から85パーセント増加している。

アマゾンで今起こっている火災の主な原因はおそらく、ウシを放牧する牧場にあるのだろう。アマゾンには数千人にのぼる小規模牧場主がいる。彼らは木を伐採し、森を焼いて牧草地に変える。そのせいで、アマゾン全域は毎年、大規模な火災に繰り返し見舞われている。

重大な問題は、そうした火災の大半が人災であることだ。シベリアやアラスカで相次いでいる、自然発火による大規模火災とはわけが違う。森林があまりに広範囲に破壊されたせいで、一帯の気候は変わりはじめ、雨が降らなくなっている。こうした気候がさらに、火災による被害に拍車をかける。

より大きな視点から見ても、雨林を破壊して牧場にするというのは、きわめて愚かな行為と言える。雨林は炭素を閉じ込め、大気中に出ていかないように蓄えてくれる。これは人類にとって不可欠な、ありがたい機能だ。木を切って燃やしてしまえば、閉じ込められていた炭素が大気中に戻される。そうして作った土地でウシを飼うというのはつまり、森の木と、恐ろしい量の温暖化ガスを生み出す動物とを交換するということだ。

消火活動の途中、ひと休みする先住民のグアハラ族とボランティアで結成された消防隊(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES)

ディーノの家族ほど激しく環境を破壊している人々に、わたしは会ったことがない。同時に彼らは、このうえなく親切な人々でもある。彼らは極めて厳しい環境の中で、過酷な労働をしながらなんとか日々を生き抜いている。そのため、アマゾンが直面している問題に対する彼らの見方や理解は、わたしたちのそれとは大きく異なる。

わたしにとって、アマゾンはとてつもなく貴重な生命の宝庫であり、何を犠牲にしても慈しみ、守るべき存在だ。世界中が、すべての人類が、アマゾンを必要としている。ディーノにとって、アマゾンは広大かつ再生可能なリソースであり、自分と家族に生活の糧を与えてくれる場所だ。

ディーノと長い話をするうち、彼がわたしと同じくらいアマゾンを大切に思っていることに、わたしは気がついた。ただ彼のものの見方が、わたしたちと大きく違っているだけなのだ。

火災の翌朝、わたしは現場に戻ってみた。黒と灰色の地面で煙がくすぶっている。倒れずに残った数本の木の幹から、青い煙が立ち上る。まるで人間の愚かさを象徴する、焼け焦げたトーテムポールのようだ。倒れて黒い炭になった木の間をゆっくりと歩いていくと、ブーツの下から灰が渦を巻いて立ち上る。木の内部はまだオレンジ色に輝いている。

わたしは混乱し、怒りを感じていた。わたしの怒りの矛先は、ディーノとその家族に向けられていたのだろうか。そうではない。もし経済的な豊かさをほとんど望めない国で家族を養わなければならないとしたら、わたしだって同じことをするだろう。では、彼らのやることを放っておけばいいのだろうか。それも違う。

わたしたちがなすべきは、ウシを食べるのをやめることだ。特にブラジルのウシは、食べるべきではない。アマゾンが重大な転換点を迎える前に、緊急に、徹底的に、この場所を脅かすプレッシャーを取り除かなくてはならない。

しかしこれを実行した場合、ディーノのような人々はどうなるだろうか。この問題を避けて通ることはできないし、避けるべきではない。そこには現実の人々の生活がかかっているのだから。そして好むと好まざるとにかかわらず、今雨林に暮らしているのは彼らなのだ。この問題を善人対悪人という枠組みに押し込めようとすることは、ただ解決から遠ざかるばかりで、何も生みはしないだろう。

アマゾンが直面する問題は今、かつてないほど深刻さを増している。課題は無数にあり、複雑に絡み合っている。それでも解決が不可能なわけではない。わたしたちがすべきなのは、牧場主にとっても森林にとっても利益のある実際的な経済モデルに基づいて、どこに、どのように重きを置くかを決めることだ。

ブラジルのアマゾンが抱える問題のひとつに、現在の行政が規制を緩め、伐採したり、焼いたりすることができる土地を増やしてしまったことがある。こうしたやり方が、アマゾンにとっても、世界全体にとっても、壊滅的な結果をもたらすことになるかもしれない。

次ページでもジェームズ氏が撮影したアマゾンの火災の写真を6点紹介する。

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