インスタを見ていると、みんな自分が写ること、自撮りみたいなことに抵抗がなくなっていると感じます。例えばファッションが好きな子なら、自分のコーディネートを誰かに撮ってもらったり、自分で撮ったりする人もすごく多いし。モデル志望の子で、カメラマンに撮ってもらうとお金がかかるから、セルフタイマーを使って自撮りしている子もいます。これも突き詰めていくと、「いいね!」が欲しいということにつながっていくんじゃないかと。「いいね!」の数が自分に対する評価だと感じているというか。まあ、男の子の場合は、単純にもてたいというのもあるみたいですけど(笑)。

――フィルムで撮った写真には「いいね!」 がもらえる何かがあるということですか?

うーん、そこは僕もよくわからないところですね。ただ今や、「いいね!」の数やフォロワーの数が、その人の評価になっちゃっている部分があるのは、若い女の子だけじゃないと思います。カメラマンを探している出版社やPR会社も、実際に撮っている写真ではなく可視化されているフォロワーの数でしか選ばなくなっている傾向があるんです。写真に対する視点そのものが、変わっているんだと感じています。若い人たちのフィルム人気も、そういう現在の写真に対する視点から生まれているんじゃないかという気もするんですけどね。

――そういう現状で児玉さんは店に来る若い人たちにどうフィルムを楽しんでほしいと感じていますか?

最初は楽しいから撮るだけでいいと思うんですけよ。でもはまった人には、フィルムで撮った写真に何ができるのかということを、考えてもらえるとうれしいですね。

VOIDLENSオーナーの児玉さん。香港のデモの様子を撮りに行って写真展も開く現役のカメラマンでもある。簡単な修理もお手の物
取材中に来店したロシア人のエリナ・ツテラゼさんは、両親の古い写真を見て、フィルムカメラに興味を持った。日本のロックが好きで、ライブ写真を撮りたくてカメラを買ったそう

◇  ◇  ◇

取材の最中にVOIDLENSを訪れた若い女性の二人連れは、高校時代は写真部で「写ルンです」で写真を撮っていたけれど、大学生になってまた写真を撮りたくなったといいながら、ズーム付きのペンタックスのAFコンパクトカメラを購入。続いて来店した若い男性の二人連れは「かわいい」を連発しながらちょっとレトロなデザインのピッカリコニカを買っていった。平日の午後、わずか20分あまりの出来事で、フィルムカメラの人気の一端を感じさせられた。

デジタルでは撮れない写真を求めて 最新フィルムカメラ最前線
フィルムカメラ女子 「私は一眼レフよりコンパクト」
充電は? フィルムカメラ女子が頼りにする銀塩専門店

(文・写真 吉田眞木 ※この記事の写真はネガフィルムで撮影しました)

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