愛らしいカモノハシが急減 初の本格調査で判明

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/9/23

カモノハシは、進化が生み出した宝物でもある。なにしろ地球上にわずかに残った単孔類(卵を産む哺乳類)のうちの1種なのだ。そのうえ、カモノハシのミルクに含まれる抗生物質が人類の命を救うかもしれないとか、カモノハシの毒が糖尿病の治療薬になる可能性があるといった、興味深い事実も明らかになってきている。

水道公社メルボルン・ウォーターの研究の一環として、研究者たちはカモノハシのくちばしの大きさを測っている。オーストラリア、ヒールズビルにて(PHOTOGRAPH BY DOUGLAS GIMESY)

毛皮目当ての乱獲

17世紀にヨーロッパ人がオーストラリアにやってくると、柔らかく防水性のある毛皮をもつカモノハシは格好の獲物となった。その毛皮は数百年にわたってさかんに取引され、20世紀初頭にカモノハシ猟が禁止されるまで続いた。

「私たちが見つけたある記録には、1人の業者が2万9000枚のカモノハシの毛皮を売ったことが記されていました」とホーク氏。

そんな状況にもかかわらず、カモノハシの個体数について、厳密な調査は断片的にしか行われてこなかった。「カモノハシは調査が難しいことで知られています」とプレストン氏は言う。カモノハシは警戒心が強く、夜行性であるため、日中の調査では見つかりにくい。そして、ほとんどの時間を水中で過ごすため、足跡やフンを調べる追跡方法もうまくいかない。

研究者たちは近年、水中にどんな動物がいるかを探る環境DNA分析や、動物の動きを追跡する音響タグなどの新技術を活用している。市民科学者がカモノハシの目撃情報を投稿できる「platypusSPOT」(platypusはカモノハシのこと)というスマートフォンのアプリさえある。しかし、どんな技術をもってしても、1980年以前、あるいはオーストラリアへの入植が始まった1780年代以前のカモノハシの個体数はわからない。

麻酔をかけたカモノハシの体を調べるニューサウスウェールズ大学カモノハシ保全イニシアチブのギラッド・ビノ氏(左)とターニール・ホーク氏。カモノハシの行動を追跡するため、一時的に電波送受信機を取り付けられていた(PHOTOGRAPH BY DOUGLAS GIMESY)

そこでホーク氏らは今回の研究で、258年分に及ぶ合計1万1000点以上の歴史的文献を調査。カモノハシの過去の個体数と分布を明らかにし、platypusSPOTの目撃報告を含む現代のデータと比較した。

データには不確定要素が多く、厳密な数を算出することはできなかったが、それでも昔に比べてかなり少なくなっているという傾向は明らかだった。100年前には1日に10~20匹以上も捕獲されていたような場所でも、今では夜を徹した調査でほんの数匹確認できれば運が良いと言えるほどだ。

歴史的記録はあてになるか

「カモノハシのように、生態学者による調査が始まる前に個体数が減少してしまった種については、こうした歴史的な観察記録が非常に重要になります」と米メーン州、コルビー・カレッジの歴史生態学者ローレン・マクレナハン氏は話す。なお氏は今回の研究には関わっていない。

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