Men's Fashion

スカーフのような軽やかネクタイ 男の胸元に艶添える

女がときめく男の装い

ファッションディレクター 清水久美子

2019.9.20

秋深し。タイドアップが楽しい季節になってきました。それは女性にとってもウエルカムな季節。タイをした姿は、男性ならではの太い首、厚い胸などが引き立つもの。丸の内の通りすがりで、ときめき回数がドンと跳ね上がるのも、このタイドアップの季節なのです。




加えて、女性がタイに思わず反応するのは、別腹の理由があり。どんなにメンズファッションに疎い女性であっても、タイを見れば、その趣味でなんとなくのお人柄を拝察するもの。動物柄であれば「コミュニケーション好きかしら……」、とか、レジメンであれば「真面目な価値観ね」など、タイが与えるファーストインプレッションは、実に大きな影響力があるのです。

Vゾーンの切り札にして、恋の切り札ともなる、このネクタイという存在。おしゃれの秋、オンビジネス目線だけでなく、そんな女性目線的にも好感度の高いタイを選ぶのは、豊穣(ほうじょう)の季節、あながち無駄な投資ではないのです。

■イタリア語で7つの折り目「セッテピエゲ」

では、どんなネクタイが女性の好感度をつかむのでしょうか、その答えのひとつがセッテピエゲ。ご存じ、ラテンの気質が育んだ、大人っぽくも艶っぽいネクタイの種類なのです。

おしゃれ好きには名高いネクタイの金字塔、それがセッテピエゲ。ネクタイの製造方法の一種ですが、イタリア語で7つの折り目、を意味します。通常のネクタイが3つ折りなのと比べ、その倍近い生地を使い、しかも基本芯地を使わず、剣先も手縫いというなんとも手間のかかった製造方法で作られます。その結果、ネクタイの起源であるスカーフのような立体感。Vゾーンのボリュームが出て、男性的な立体感が強調されますが、単純に力強さを強調するのではなく、芯地がないことで丸い柔らかさが生まれ、なんとも言えない大人の艶っぽさ、包容力を感じさせるのです。

男性的な力強さと、色っぽさの共存、それが、そうセッテピエゲの魅力なのです。それは、酸いも甘いも味わった壮年の男性が、ふっと見せる柔らかい笑顔のごとく……。女性にとっては最高の媚薬(びやく)である雰囲気を、その顔周りに与えるのです。