工場で学んだリーダーの条件 朝令暮改でも軸はぶれずライオン 掬川正純社長(上)

ライオンの掬川正純社長
ライオンの掬川正純社長

歯磨き粉や洗剤など日用品の大手ライオン。最近は口臭ケアができる歯磨き粉「ノニオ」やこすり洗いが不要な風呂用洗剤「ルックプラス」など、高機能商品で業績を伸ばしている。2019年1月に就任した掬川正純社長(59)は制汗剤の研究開発をはじめ、さまざまな日用品の開発やマーケティングを手がけた経験を持つ。さらなる成長へ向けて「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニー」の目標を掲げるライオンのかじ取りを担う掬川社長に、リーダーのあり方について聞いた。

◇  ◇  ◇

――リーダーとしての原点は何ですか。

「入社7年目で制汗スプレー材料の研究チームのリーダーを任されたことです。制汗剤に採用してもらうための新しい制汗パウダーの開発を手がけました。3人の小さなチームでしたが、研究から実験の方向性まで、かなり大きな裁量を認められていました」

「ビーカーでの実験から始めて、工場で実際に生産するところまで、一連のプロセスを経験することができました。通常、実験チームと生産を担当するチームは別々です。ただ当時、制汗パウダーはマイナーな商品で、工場生産の担当者にあまり相手にされず、自分たちで手がけることにしました」

「工場へ行けば、上司はついて来ないので私が責任者です。現場で『どうする』と判断を求められたら、私が判断しなくてはいけません。量産体制の開始に向けて、朝から晩まで現場と膝詰めで議論しました。(異例でしたが)生産開始まで、自分たちも工場で立ち会いました。今思い返せばひやっとするような失敗も数多くありました」

工場での経験が宝物

「いってみれば源流の一滴から海にたどり着くまで、商品開発の仕事を全うすることができました。原価計算や固定費の配分など、全て自分で計算したおかげで、工場の仕組みが身をもってわかりました。この経験は私の宝物です。今でも原価のことはうるさく言うようにしていますが、この経験があったからこそです」

――つらかったのはどんなときですか。

「リーダーを務めるとその時々、優先順位をつけて取捨選択を迫られる場面が多くあります。予算は限られているので、それぞれの仕事に対して携わる人の顔が見えるなか、差をつけるのは常に苦しいです。それぞれにわかってもらうためには対話が必要です」

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