若い世代の間でフィルムを使うフィルムカメラ(アナログカメラ)がはやっている。NIKKEI STYLEの連載「私のモノ語り」でも、橋本愛さん、玉城ティナさん、森川葵さんたちがフィルムカメラについて熱く語っていたが、アトレ吉祥寺にあるコイデカメラには1日30本以上のフィルムが現像に持ち込まれるという。店にやってくるのはほとんどが若い女性で、カメラはオートフォーカスのコンパクトが中心。彼女たちはなぜフィルムカメラを使うのか。店長に着任以来、フィルム戦略に力を入れてきた今野亮平さんに話を聞いた。
◇ ◇ ◇
――今、若い子の間でフィルムカメラが流行っているって本当ですか?
本当です。ウチの店がフィルム関係に力を入れ始めた5年ぐらい前から比べると、フィルムカメラで写真を撮るお客様は2倍以上に増えています。店ごとに差があるので、コイデ全体だと毎年10%程度でしょうか。それでも増えているのは間違いないです。フィルムの現像本数をみても、うちのお店では1カ月に1000本を超えていますから。
――1000本を超えるということは1日30本以上ということですね。お客さんはどういう人が多いですか?
うちの場合は吉祥寺という立地もあるので、圧倒的に若い子です。10代、20代のオシャレに敏感な層が来てくれています。
――「フィルムの現像に来る常連」と聞くと、つい年配の方をイメージしてしまうのですが。
今は数では若い子の方が多いですね。年配の方は1割以下だと思います。年配で写真好きな方は年々フィルムから離れている印象があります。
フィルムでしか撮れない日常
――若い人たちはどうしてフィルムで写真を撮るんでしょうか?
若い子にとって「フィルムで撮る」というアナログな行動は、ちょっと特別な行為になるんだと思います。
フィルムで撮った写真はデータにしても、独特の雰囲気がありますよね。デジタルの写真をどれだけアプリで加工しても、ああいう空気感みたいなものを出すのは難しい。
デジタルだとただの記録になってしまう。でもフィルムで撮ることで、我々が見ても分かる、訴えかけるものになる。「若さ」とか「切なさ」とか、そういうものを表現するのに、たぶんフィルムが向いているんでしょうね。
フィルムで撮った写真をインスタグラムに上げている人の中には、きれいな作品を撮っていて、フォロワーがものすごくたくさんいる人もいます。けれど大多数の子たちは、そうではなくて、友達の制服姿とか、青春を撮りたいんです。そんな青春のみずみずしさを伝えるのに、フィルムの粗さや雰囲気が合うんだと思います。