ビーガン向け「アボカドバーガー」は肉を一切使っていない=pixta

日本人には、「おいしそうなら何でも食べてみる」人が多いが、世界全体で見ると、このような国民は少ないようだ。それで、日本人向けでは問題にならなかったことが、来日した外国人にとっては食のバリアとして立ちはだかることになってしまう。

前述の田中さんは「それは彼らにとって楽しいことではないはずですし、日本のさまざまな料理を提供するレストランにとっても機会損失です」と指摘し、同協会ではこれらのバリアを取り払う食のバリアフリーを普及するために、食事の原材料と調理法の表示に力を入れることを推奨し、そのためのピクトグラム(絵文字)やツールの整備を進めている。

食のバリアフリーを実現するためには、そうした表示を行うことと、そのために多様な宗教、信条、健康上の理由などによる、多様な食の禁忌や習慣についての知識を身につけることが必要だ。それを考えるための基準は、次の4つに分類できるだろう。

(1)宗教によるもの

(2)信条によるもの

(3)健康上の理由などから食べられないもの

(4)健康上の理由などから避けたり低減したりするようにしているもの

(1)は上述のインドからの観光客の例に見られるような問題だ。(2)は(1)と重なる部分もあるが、ベジタリアンやビーガンなどが含まれる。(3)は食物アレルギーや、疾患による食事制限など。(4)は各種のダイエットや、(3)ほどには深刻ではないが「血圧に注意して塩分を控えている」などが含まれる。

これらを念頭に、分かりやすく正確な表示をすることで、食べる本人が自分で選べる環境作りをするというのが、同協会が進める食のバリアフリー化だ。

また、食のバリアフリー化を進める上で注意したいこととして、田中さんは提供側の勝手な判断は禁物ということを挙げている。「あくまでも判断は食べるその人のもの。こちら側の押しつけは迷惑だし、本当は食べるかもしれないものを奪う場合もある」

そのことを理解する上で役立つ意外な例を紹介してもらった。先のインド人グループのように多様な食習慣が混在している人たちでも、比較的皆が共通に楽しめる日本の食事はすしだという。たとえば、ハラルは日本でもだいぶ知られるようになったが、日本人の多くが知っているハラルの知識は、豚とアルコールはNGということぐらいだろう。しかし、ほかにもいくつかの禁忌や要求事項はある。