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ビーガンでもジビエOK? 食のバリアフリーを考える

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世界にはさまざまな宗教や信条があり、その宗教・信条ごとに食べてよいもの/いけないもののルールがあるものだ。また、アレルギーなどで食の禁忌がある人々もいる。そうした人たちにとって、ある食品に何が含まれているかわからない場合は、選択できない"バリアー"を生じることになる。それを取り払うための「食のバリアフリー」に、インバウンド対応に力を入れている企業や自治体などが取り組むようになってきている。来年、東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、多様な文化を背景に持つ人々との接点が増えることが予想される中、日本人の新たな"たしなみ"として、食のバリアフリーの考え方を身につけたい。

インドから観光で日本に来た、あるグループの話だ。食事をする段になって、少し困ったことが起こった。全員が安心して食べられそうなレストランがなかなか見つからなかったのだという。それでどうしたかというと、近くにあったインド料理店に入った……。

この話を紹介してくれたのは、今年4月に設立された日本フードバリアフリー協会(東京・港)代表理事の田中章雄さんだ。田中さんは、「これは果たして、日本観光を楽しもうとやって来た彼らが本当に望んだ食事だったと思いますか? 本当は、せっかく来た日本の料理を選んで楽しみたかったはずです」と問題提起している。

彼らはなぜ食事をする場所選びで困ったのか。それには彼らの宗教が関係している。宗教上の食の制約というと、イスラム教のハラルは日本でもだいぶ知られるようになった。しかし、世界にはさらに多様な宗教とそれに関連した習慣や禁忌がある。

たとえば、このグループの宗教構成が実際にどのようであったかは定かではないが、インドにはヒンドゥー教徒、シーク教徒(ターバン姿が印象的な人々はその宗派の一つに属する人と聞く)、ジャイナ教徒、イスラム教徒(ムスリム)、キリスト教徒などさまざまな宗教の信者がいる。そしてそれぞれに、食べてよいものと、食べることを避けていたり、禁じていたりという定めがあるのだ。

たとえばヒンドゥー教徒の多くはベジタリアンだが、肉食する人もいる。それでも、ある種の牛は決して口にしないし、牛全般を避ける人が多い。ジャイナ教徒はさらに厳格なベジタリアンである。ムスリムは豚や豚由来のものを食べない。シーク教徒も、全員ではないがベジタリアンもいる。

では、インド料理店であれば、彼ら全員がどの料理でも食べられるかというとそうではない。しかし、インド人であれば、料理名を見れば、何を使ってどのように料理したものかが分かるから、各自が自分が食べてよいものを選べるのだ。それが、日本という異国で見る初めての料理では判断がつきにくい。そのようなわけで、せっかく日本に来ても、自分の国や地域の料理を出す店に行ってしまう外国人は多いという。

さらに、そうした"食のバリアー"は宗教に関連するものにとどまらない。昨今話題のベジタリアンやビーガン、またアレルギーのある人も、それぞれに食を選択する基準を持っている。これらに対応できない場合に、それぞれの人が食を選択しにくくなる。これが食のバリアだ。

日本人には、「おいしそうなら何でも食べてみる」人が多いが、世界全体で見ると、このような国民は少ないようだ。それで、日本人向けでは問題にならなかったことが、来日した外国人にとっては食のバリアとして立ちはだかることになってしまう。

前述の田中さんは「それは彼らにとって楽しいことではないはずですし、日本のさまざまな料理を提供するレストランにとっても機会損失です」と指摘し、同協会ではこれらのバリアを取り払う食のバリアフリーを普及するために、食事の原材料と調理法の表示に力を入れることを推奨し、そのためのピクトグラム(絵文字)やツールの整備を進めている。

食のバリアフリーを実現するためには、そうした表示を行うことと、そのために多様な宗教、信条、健康上の理由などによる、多様な食の禁忌や習慣についての知識を身につけることが必要だ。それを考えるための基準は、次の4つに分類できるだろう。

(1)宗教によるもの

(2)信条によるもの

(3)健康上の理由などから食べられないもの

(4)健康上の理由などから避けたり低減したりするようにしているもの

(1)は上述のインドからの観光客の例に見られるような問題だ。(2)は(1)と重なる部分もあるが、ベジタリアンやビーガンなどが含まれる。(3)は食物アレルギーや、疾患による食事制限など。(4)は各種のダイエットや、(3)ほどには深刻ではないが「血圧に注意して塩分を控えている」などが含まれる。

これらを念頭に、分かりやすく正確な表示をすることで、食べる本人が自分で選べる環境作りをするというのが、同協会が進める食のバリアフリー化だ。

また、食のバリアフリー化を進める上で注意したいこととして、田中さんは提供側の勝手な判断は禁物ということを挙げている。「あくまでも判断は食べるその人のもの。こちら側の押しつけは迷惑だし、本当は食べるかもしれないものを奪う場合もある」

そのことを理解する上で役立つ意外な例を紹介してもらった。先のインド人グループのように多様な食習慣が混在している人たちでも、比較的皆が共通に楽しめる日本の食事はすしだという。たとえば、ハラルは日本でもだいぶ知られるようになったが、日本人の多くが知っているハラルの知識は、豚とアルコールはNGということぐらいだろう。しかし、ほかにもいくつかの禁忌や要求事項はある。

中でも比較的問題になりやすいのは、血液が禁忌の対象(ハラーム)であるということだ。つまり、「血の滴るようなステーキ」というのはNGとなる公算が大きいが、すしでも問題になり得るものがあるという。それはマグロだ。真っ赤なマグロは血を連想させるので、それを避けるムスリムがいるという。ただし、全員ではない。それはムスリム一人ひとりの考え方によるという。

だから、ムスリムには赤身を出さないと決めるのではなく、本人一人ひとりに決めてもらうことが大切なのだ。「こういう人にはこうすればいい」と単純化することが失敗につながるというのは、食以外のバリアフリーについても重要な基本だという。

たとえば、白杖を持った人がレストランに来店したら点字メニューを差し出せばOKということではないという。白杖を持った人でもある程度は見えるという人もいるし、目の不自由な人全員が点字をマスターしているわけでもない。大切なのは、ステレオタイプに陥ることなく、本人の事情と意向をくみ取ることだ。

一人ひとりの判断の重要性は、ベジタリアンやビーガンについても言えるというのは、多様な食習慣に対応した食情報を発信するWebサイト「Vegewel」を運営するフレンバシー(東京・渋谷)代表の播太樹さんだ。播さんは業務や交友からさまざまなベジタリアンと接しているが、驚くべき話を披露してくれた。

「私の友人の一人はビーガンを自認していますが、彼女はジビエは食べるというのです」

通常、ビーガンというのは一切の動物の搾取を認めないという社会運動を推進している人々をいうので、多くのビーガンはその人の主張を認めないだろう。しかし、その人がなぜそう考えるかというと、「彼女の場合、家畜の飼養が環境に悪いのではないかという考え方から、畜産物を利用しないライフスタイルを取っています。しかし、野生動物はそれに当てはまらないというのが彼女の考え方なのです」というのだ。

信条による食の選択も実に多様だと感じさせる逸話だ。播さんはさらに付け加える。「ベジタリアンというのは、限りなく"マイルール"の世界だと見ています。ベジタリアニズムを選択した考え方の背景も、実際の食事の選択のあり方も、一人ひとり全く違うと言っていい」。だからこそ、「ベジタリアンなら野菜だけ出していればいいだろう」といったステレオタイプで勝手な判断は禁物というわけだ。

もう一つ、食物アレルギーについては、アナフィラキシーショックによる死亡を含む重篤な症状が、行政による指導やニュースなどでも知られるようになり、給食、飲食店、食品工業では、かつてよりも注意が払われるようになってきた。しかし、日本語表記だけの場合が多いという問題がある。

また、アレルギーがあっても症状が軽いものについては、少量なら食べているという人もいる。それから考えると、日本人以外にも分かりやすくすることと、本人からの意思表示ができるようにする仕組みも重要だと分かる。

それに対応した例としては、Webサイト「アレルギーっ子旅する情報サイトCAT」が作成している「FOOD ALLERGY CARD」(アレルギーカード)が挙げられる。これは、食物アレルギーを持つ訪日外国人が、自分の食物アレルギーをカードにチェックを入れて示すことができるようにしたものだ。

世界にはさまざまな宗教、信条、あるいは健康上の事情がある。その意味では食のバリアフリーは奥が深い。しかし、取り組みの根本はシンプルだ。つまり、何を使ってどう調理したものかをわかりやすく正確に表示した上で、食べる本人が決められるようにするということだ。

(香雪社 斎藤訓之)

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