プレゼンに社員の生ツッコミ 興奮のインターンに密着
ビジネス本番さながらの企画提案やプレゼンテーションを体験できる「ワークショップ型」インターンシップに密着した。「現場型」と異なり単なる座学になりがちなところを、インターン受け入れ企業の工夫でリアルなビジネスの厳しさを再現していた。
9月はじめの日曜日。東京・渋谷のサイバーエージェントにインターンとして集った大学生ら約30人は、同社が運営する「アベマTV」の新番組企画案を必死になってひねり出そうとしていた。
採用直結が生み出す本番さながらの高揚感
学生が真剣なのは、提案した企画が面白ければ事業化されるかもしれないからだ。そもそも今回のインターンは2021年春入社予定の人を対象にしており、採用に直結している。
「僕たちの案がテレビで実現するかもしれない。そう考えると、当然本気になりますよ」。
参加した同志社大学商学部3年の松野貴典さんは興奮気味だ。松野さんのチームは「かわいい子を見るならアベマTV」と題して、芸能人やモデルではないが街にいるかわいい子をあの手この手の番組で紹介し視聴者を引っ張ってこようというアイデアを提案。プレゼンテーションでも高い評価を得た。
審査員の多くは実際にアベマTVの現場を回している社員なので、プレゼン後の質疑は具体的だ。例えば、「視聴者から#(ハッシュタグ)でストーリー案を募って脚本を決めて、ドラマを制作する」という企画を発表したチームには「ドラマは6カ月ほどかけて作るんだけど、そこどうなってる?」と現実的な指摘が飛んだ。「2週間でと思ってます」と学生が答えると、社員からは「その短期間では無理があるかもね」と笑いが起きた。
学生からのプレゼンが一通り終わると、別室で審査員が企画の審査を開始。「さっきの『2週間』は非現実的だけど、コンセプト自体はすごく面白いよね!」と審査員同士で盛り上がる場面もあった。その後、ものすごいスピードでインターン一人ひとりを「ランク付け」。特に優秀な学生はさらなる選抜型インターンに進むことになっている。
学生が答えに窮するほどの質問攻め
5日間のコースで夏、冬、春の長期休み中に開催されている野村総合研究所の経営コンサルティング部門のインターン。社員から容赦のないツッコミが入ることで有名で、腕に覚えのある学生の間で人気が高い。
8月上旬、野村総研の会議室で学生5人が緊張の面持ちで発表を始めようとしていた。お題は「メーカーA社は、代替肉製品による高収益なビジネスモデルの実現に向けてどんな施策を打つべきか」。野村総研のコンサルタントになりきって提案する。
緊張する学生たちの視線の先にいるのは、A社の幹部役をつとめる野村総研の4人の社員だ。このチームの提案は「客単価の高いレストランチェーン向けに代替肉商品を開発、OEM(相手先ブランドによる生産)供給する新事業を展開すること」だった。
プレゼン後の質疑応答からが「本番」の始まりだ。社員役から最初の質問。「今回のご提案ではある程度の投資が必要だと思うのですが、ホールディングス自体にどんなメリットがあると進言したらいいでしょうか」
いきなり来た、直球の質問。男子学生が答える。「他のグループ会社のロングセラー商品で特許切れなどもあって収益が落ちていることを考えると、その分野以外の収益があることはホールディングスにとってうれしいのではと思います」
なんとか切り抜けたか、と思っていると、社員は追い打ちをかける。「親会社は別の事業を確実に成功させ収益をあげていこうとしています。その中で、子会社のA社に、大きな投資をしてくださいと言えるでしょうか」
その後も厳しいやりとりは続き、痛いところを突かれた学生が答えに窮するような場面も多々あった。それでも本番のコンサルさながらの厳しさを体感できることから毎年、学生の応募が引きも切らないという。
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多くの学生がインターンに参加し始めるのは大学3年の夏。参加できる期間は実は限られており、関心のあるインターン全てをカバーできる時間は実はない。学生の皆さんは、自分が本気になれるインターンを厳選し、「働くってなんだ?」を体感してほしい。
(藤原仁美、安田亜紀代)
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