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池田理代子さん 「ベルばら」オスカルはなぜ女性に

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

「貯金ゼロ。それが私の生きざまです」と前半のインタビューで明らかにした漫画家でオペラ歌手の池田理代子さん(71)。幼少期から学校の成績は抜群だったが、意外にも容姿にはコンプレックスがあったという。やがて漫画の神様、手塚治虫さんにあこがれ、漫画雑誌に応募した4コマ漫画を石ノ森章太郎さんが激賞。東京教育大(現筑波大)へ進学後は学生運動にのめり込み、大学1年で家出して家庭教師のほか美人喫茶のウエートレス、女子工員など様々なアルバイトを経験しながら、売れっ子漫画家として大きく飛躍を遂げる。「ベルサイユのばら」誕生の経緯なども含めて過去の軌跡を回想してもらった。

最初のショックは「不細工」、空想と読書に没頭

――どんな家庭環境で生まれ育ったんですか。

「1947年に大阪で生まれた団塊の世代で、妹と2人の弟がいます。父は自転車メーカーの管理職。戦時中に南方に出征し、捕虜になって奇跡的に帰還したので私が生まれました。でも父は戦時体験について自分からあまり話そうとしなかったし、私もあえて聞こうとはしなかったので、詳しい経緯は分かりません。専業主婦の母からは『男に食べさせてもらわず、手に職を持ち、自力で生きていけるようになりなさい』と口癖のように言われて育ちました」

「最初にショックを受けたのは4、5歳の頃。周囲から『あんたの顔、なんでそんな不細工なん?』と言われたんです。2学年下の妹がかわいくて美人だったので、よく比べられてつらい思いをしました。縄跳びなど遊びでも私は友人からのけ者にされ、泣きながら見ていたものです。だから自然に自分の殻に閉じこもり、空想にふけったり、独りで本や漫画を読んだりするのが好きになりました。中学に上がる時、父の転勤で大阪から千葉県柏市に転居します」

――どんな本や漫画を読んでいたんですか。

「父が本好きで書棚にはたくさん本がありました。私は平家物語、太平記、源平盛衰記、本居宣長全集など日本の歴史物をよく読んでいましたね。シャーロック・ホームズの推理小説も好きでした。漫画雑誌は親に買ってもらえないので、友人の家で読ませてもらっていました。漫画で最も感動したのは手塚治虫先生の『つるの泉』。夕鶴を題材にした作品で、感動して涙が止まらず、食事ものどを通らなかったほどです。漫画には人を感動させる力があるんだと初めて知りました」

手塚治虫「つるの泉」で開眼、石ノ森章太郎から4コマ漫画を激賞

――4コマ漫画が石ノ森章太郎さんに激賞されたそうですね。

「中学の時、起承転結の付いた4コマ漫画を初めて描いて漫画雑誌に投稿したら、石ノ森章太郎先生がとても褒めてくださり、賞品をもらいました。うれしくて『お会いしたい』と手紙を送ると、なんと先生から『遊びにいらっしゃい』と連絡があったんです。でも母に猛反対され、残念ながら行けませんでした。石ノ森先生は伝説のトキワ荘(手塚治虫、藤子不二雄、赤塚不二夫各氏ら人気作家が共同生活した豊島区のアパート)からはもう出ていたと思いますが、もし先生のアトリエにお邪魔していたら、アシスタントになるとか、もう少し違う人生が開けていたかもしれませんね……。後に石ノ森先生とそんな笑い話をした思い出があります」

高2で読んだ「マリー・アントワネット」、「ベルサイユのばら」を着想

――学校では優等生だったようですね。

「柏市の公立中学から都立白鴎高校に進みますが、成績はほぼトップだったと思います。高校の頃は小説家になりたくて、ドストエフスキーやトルストイ、ゴーリキーなどロシア文学に熱中しました。特にドストエフスキー作品は短編も含めてほぼ読破しましたね。大好きなのは『カラマーゾフの兄弟』。自分でも連載小説を書いていて、クラスの友人に回覧したり、文学雑誌の懸賞にも応募したり。でも懸賞にはなかなか入選せず、せいぜい選外佳作止まり。『自分には実力がないのかな……』なんて落ち込んだりしていました」

「ただ高校時代は色々なことに興味が広がります。ブラスバンドではトランペットを吹いていました。高校からの帰り道、よく立ち寄ったのが上野の映画館や寄席。落語の演目では『いかけ屋』が好きでした。一方でアマチュア無線やラジオ作りにも凝り、無線免許も取得。試験会場が男性ばかりで珍しがられたのを覚えています」

――高2の夏休みに運命の出会いがありましたね。

「ええ、宿題の課題図書でシュテファン・ツヴァイクの『マリー・アントワネット』を読んだんです。史実の厚みや運命に翻弄される王妃の悲劇に心を動かされました。そして『将来は小説なのか、映画なのか、漫画なのかは分からないが、これを必ず作品にしたい』と誓いました。題名の『ベルサイユのばら』もすでにこの時から決めていたんですよ」

70年安保闘争、家出して工員や美人喫茶でバイト

――なぜ東京教育大の哲学科に進んだんですか。

「仕事やお金や企業に結び付く勉強に抵抗感があったし、哲学が一番『純粋な学問』という感じがしたからです。成績が良かったので研究者になろうと思っていました。でも父は女性が大学に進むことに消極的で『浪人はダメ』『公立で』『学費は1年しか出さない』という条件を出されていた。大学では70年安保闘争が吹き荒れ、私も共産党の下部組織の民青に所属し、学生集会などに参加しました。ヘルメットの上から鉄パイプやゲバ棒で頭をたたかれた経験もあります」

「でも大学1年の秋、反体制を叫んでいるのに親のすねをかじり続けているのはおかしいと思い、親に書き置きして家を出ます。知人の家などを転々とした後、小石川に4畳半の部屋を借りてアルバイトで生活費を稼ぎながら学校に通いました。家庭教師のほか、工場のベルトコンベヤーの前でネジを締めたり、旋盤で金属を加工したり、時給がいいので『美人喫茶』で働いたこともあります。黒いワンピースに銀のハイヒールを履き、コーヒーなどを運ぶだけでしたが……。そうこうするうちに、人に会わなくて済むので漫画を描き始めたんです」

作画もコマ割りも見よう見まね、貸本で修行重ねる

――下積みもせずにいきなり漫画を描けるものですか。

「作画もコマ割りも、見よう見まねでしたね。水野英子先生(トキワ荘に居住した紅一点の女性漫画家)などの作品のタッチには大きな影響を受けました。そして数カ月かけて64ページもの長編を描き、新人のくせに集英社の『マーガレット』や講談社の『少女フレンド』に作品を持ち込んだんです。当然、けんもほろろに突き返されますが、講談社の方から『才能があるかもしれない』と貸本専門の出版社を紹介してもらい、そこで自由に作品を描きながら作画や構成などの修業を積みました」

「それから2年後に『少女フレンド』にスカウトされ、さらに『マーガレット』へと引き抜かれます。連載や長編などを描き、ある程度実績を上げた頃を見計らい、『ベルばら』を描きたいと打診しました。当初、編集部から『歴史物は当たったためしがない』と反対されますが、『必ず当てます』と言い返し、『当たらなかったらすぐに打ち切る』という条件で72年から連載を始めました」

男装の麗人「オスカル」、男性心理が分からないから女性に

――「ベルばら」は大ヒットし、74年に宝塚歌劇団で舞台化されるなど社会現象になりますね。

「ヒットした要因は、やはり男装の麗人、オスカルという架空人物を登場させたことでしょうね。革命時に市民の側に立ったフランス衛兵隊の隊長を描きたかったけど、私はまだ24、25歳で男性心理がよく分からない。だから苦肉の策で女性という設定で描くことにしたんです。最初はアントワネットを主人公にするつもりでしたが、中盤からはオスカルが主人公になります。ケガの功名のようなものですね」

「途中で絵のタッチが変わったのは、美大の学生さんからデッサンや油絵を学んだためです。いつでも大学に戻って研究者か教員になれるように大学にはずっと在籍しましたが、結局、仕事が忙しくなり、大学7年で中退します。でも『ベルばら』以降、編集部の意向には必ずしも沿わずに自由に作品を描けるようになったのはうれしかったですね」

――今はどんな生活のリズムですか。

「毎日、歌のレッスンをしたり、漫画を描いたり、パソコンでオペラの脚本を書いたりして過ごしています。昔から夜中に集中して仕事をする夜型人間なので、就寝は明け方3時くらい。起床はお昼すぎが多いですね。だから朝早いリハーサルがある時はつらいです。一昨年に拠点を東京から移した熱海のマンションは景色もいいし、快適なので仕事にもよく集中できます。台風が来たりすると大変ですが……。今年はクリスマスコンサートで歌いますし、オペラ制作にも取り組む予定です。ぜひご期待ください」

(聞き手は編集委員 小林明)

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