日本の工芸再興に取り組む創業300年超の「老舗ベンチャー」中川政七商店(奈良市)の13代目、中川政七会長(45)に、大学生2人がU22の藤原仁美とともにインタビューした。2人に共通する悩みは、大学や地域社会といった伝統あるものにチャレンジを阻まれた経験。そんな2人に中川氏が伝えた「変化の起こし方」とは。(聞き手は、慶応義塾大学1年の山田璃々子さんと、上智大学4年の桜井爽太さん)。
――(慶応義塾大学1年 山田璃々子)300年を超える伝統のある会社を、中川さんの代で大きく変革されたと聞きました。伝統とのせめぎ合いで悩まれたことはないですか。実は私、中学高校で40年以上続くミュージカル部の部長をつとめた時に、新しいことに挑戦しようとしても、学校や先輩に、「伝統を変えるのはよくない」と反対され実現できませんでした。
「部活は難しいよね。OBやOGは自分より年上で社会経験もある。一方の部長は任期が普通はたった1年。仕組み上、部長が短期間で何かを大きく変えていくのは難しいかもしれない。その中でできるのは、OBOGを集めて『ビジョンを決めてくれ』って頼むことかな。ビジョンが決まったら、現役の部員たちはOBではなくビジョンに100%コミットすると決めればいいのかもしれない」
「実は中川政七商店は、伝統を守ろうという意識はほぼないんです。そもそも僕が父から会社を継いだときにも「とらわれるな」と言われたくらいですからね」
「我々は後ろを見ることはありません。『日本の工芸を元気にする!』という、僕が社長になったころに考えたビジョンだけを見ています。社員には、「社長に仕えるんじゃなくて、ビジョンに仕えるんだよ」と言い続けています」
――(山田)私自身、自分のビジョンに自信がなくて先輩の言葉とか伝統という「他者の目」にしがみつこうとしていたのかもしれません……。もう一つお聞きします。何かを変えたり新しいことを始めたりするのに必要なことは何でしょうか。大学で朝食を提供するキッチンカーを始めようと活動していますが、衛生面などでハードルにぶつかっています。