「AFTERMIX」と「MIXTAPE」を合体させたタイトル

アルバムタイトルの「AFTERMIXTAPE」には、音楽をラフに作って発表するという意味も込められているんですよ。もともとMIXTAPEは、DJが世に知られてない曲や知ってほしい曲をテープにひとつなぎにしたもので、今でいうプレイリストに近いものでした。いつしかメディアが変わり、目的も変わりながらMIXTAPEという言葉だけが残った。近年では、「アルバムは出してない。自分が出しているのはミックステープだ」と公言し、全米1位を獲ったミュージシャンすらいます。「AFTERMIXTAPE」は、心のままに、勢いを大切にした作品で、結果的に今まで自分がやれてなかったことに挑戦できました。

少し話はそれますが、「AFTERMIX」というワードも以前から気になっていて、使いたかった言葉。僕はコーヒーが好きで、コーヒーの生豆を種類ごとにそれぞれベストな焙煎(ばいせん)を施し、その後でブレンドする手法を「AFTERMIX」と呼ぶことを知りました。手間はかかりますが、その分おいしいブレンドコーヒーになるんです。音楽を作る過程で、「この曲は●●さんにミックスしてもらおう」「あの曲だったら□□さんがいいな」と、自分がやっていることも同じだなと。「AFTERMIXTAPE」は「AFTERMIX」と「MIXTAPE」が合体した名前なんです。

「『AFTERMIX』と『MIXTAPE』を合わせて『AFTERMIXTAPE』というタイトルにしました」

そうやって、アイデアの芽を膨らませて洗練させていく。曲作りは僕にとって今も昔もずっと面白いし、飽きることがありません。最近は、その楽しさをもっと多くの人と分かち合いたいと思うようになりました。エデュケーションとエンターテインメントを掛け合わせた「エデュテインメント」という言葉がありますが、幸いにも僕は説明したり人に伝えたりするのが得意なタイプ。なので、今後はライブなどを通じて楽しみながら音楽を教える機会をもっと増やしていきたいですね。

「楽しみながら音楽を教える機会をもっと増やしていきたいですね」
KREVA
 1976年生まれ、神奈川県生まれ東京都育ち。慶応義塾大学在学中から音楽活動をスタート。1997年に3人組ヒップホップユニット、KICK THE CAN CREWを結成。数々のヒット曲を放ち、2002年に「紅白歌合戦」に出場。2004年からソロ活動を始動。2006年のアルバム「愛・自分博」はアルバムチャート1位を獲得。同年に開催した日本武道館ワンマンライブとともに、邦楽におけるヒップホップソロアーティスト初の快挙となった。2019年9月26日に横浜アリーナで「908 FESTIVAL 2019」を開催する。最近ハマっているのは、「植物感があるプレミアムテキーラで作るハイボール」だという。

AFTERMIXTAPE

ソロデビュー15周年を記念して1月から9か月連続リリースを敢行。その締めくくりに創られた即時性と実験性を備えた作品。高いスキルに裏打ちされたパワフルなラップを堪能できる楽曲から、メロディックで聴き心地の良いナンバー、心励ますメッセージなど懐深い全12曲。ビクター/初回盤A 4908円(税別)

(文 橘川有子、写真 藤本和史)